誰もが特別な才能をもっている!「違い」を育む保育の実践

ラルスマイルジャパン代表取締役 松本理寿輝

ニューロダイバースな子たちだけでなく、人は誰もが異能性をもっている──。日本の中心、東京で「違い」を育む幼児保育に取り組む「まちのこども園」を取材した。


JR原宿駅を降り、代々木公園に入ってすぐ、都心の中の緑豊かな一等地で、木造のモダンな建物が迎えてくれる。認定こども園「まちのこども園 代々木公園」だ。

国家戦略特区制度を活用し、公園の広大な広場を園庭がわりに利用できる。東京都の公募に応じて採用され、2017年に開園した。東京大学とパートナーシップを組むなど、同施設内の広々とした吹き抜けのスペースは、大学、企業、自治体、地域コミュニティ、保護者たちと協働・実践する場となっている。

「保育に興味をもったのは学生のころ。“子どもの学び場”を保育園のみにとどめておくのはもったいないと思っていました」。そう語るのは、同園を運営するナチュラルスマイルジャパン代表取締役の松本理寿輝だ。

松本は、博報堂、不動産ベンチャーなどを経て、2010年に保育事業に参入。11年に小竹向原に「まちの保育園 小竹向原」を開園、新規事業者として当初は認可を得るのに苦労したが、徐々にコミュニティとの協働活動が評価され、森ビルや自治体から声がかかるなど、現在は都内5カ所で認定保育所・こども園を運営している。

学校や教育は社会を追いかけるものではなく、社会を「つくる」ものであると、松本は考える。「学校や園自体が社会のコンテクストのなかに入り、社会と一緒に考えていかないともったいない」と松本。「まちぐるみ」をキーワードにかかげ、コミュニティコーディネーターと呼ばれる役割を設置し、地域との連携も積極的に行う。

また同園は1990年代にアメリカ版ニューズウィーク誌に世界で最も先進的な乳幼児教育として取り上げられたレッジョ・エミリア・アプローチからインスピレーションを受けた“固有のインテリジェンスを丁寧に育む教育”を実践。レッジョ・アプローチの実践として、子どもたちの成長を写真や文章で見える化、コミュニティでシェアすることで子ども、保護者、地域の関係性を強化する“保育ドキュメンテーション”と呼ばれる手法も活用している。

「誰しも、ある程度は特異な能力、異能性をもっています」

そう語る松本の下、まちのこども園・保育園では「遊び」を中心にアプローチし、保育者は環境づくりと子どもたちの探究活動をサポートする。

そんな園児たちが先日、「葉っぱの美術館」を自分たちで企画・実現し、「なぜ葉っぱは水に浮かぶのか」という物語を載せた招待状まで送ってくれたと、松本はうれしそうに語る。

「子どもたちは自分が感じていることや興味のあることと触れ合ったときの感動を、自分たちの言葉で、方法で教えてくれる。その姿は、純粋に美しいと感じます」
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文= 岩坪文子、荒川未緒、飯塚真紀子(コラム)写真= 小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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