日本フードサービス協会によれば、2020年の「居酒屋・ビアホール」の売上げは6489億円では前年比36%減。さらに2021年の同カテゴリーの売上は2020年比で57.8%、コロナ前の2019年比ではなんと27.2%と、いちじるしい市場縮小に苦悩している。
そんな中、ここに奇跡の居酒屋チェーンがある。「鳥貴族」だ。一時はコロナ禍で売上げが半分以下に。それでも、政府からの休業要請がまだないタイミングで休業するなど「人命第一」を貫く。それなのに今年、5月の既存店売上高は前年比なんと16倍超というから驚きだ。
チキンバーガー専門店「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」をオープン、新規事業への意欲も見せる鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長に、全品均一価格へのこだわりについて、また「安くて良いものを使う」をサステナブルに実現できている理由についてなどを聞いた。
聞き手は、あの伝説のグルメ番組「料理の鉄人」にも関わったテレビディレクターであり演出家、同人誌「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」発行人も務める「食べ方学会」会長の市島晃生。マスコミの世界で、365日、苛酷な不規則勤務を強いられる業務をこなしながら、今日の仕事と明日の充実のため、「後悔しない今日の一食」を追求し続けてやまないベテランテレビマンだ。
後編>> 鳥貴族社長に聞いた「トリキではどう注文するか、何で飲むか」
近所に全品均一価格の炉端焼きのお店が──
──鳥貴族に行ってまず驚くのは、全品350円(税込)であるということです。全品均一価格へのこだわりについてお聞かせください。
全品均一価格にしたのは創業から1年経ってからでした。
元々、私の家の近所に全品均一価格の炉端焼きのお店があったんです。客の立場として、それが非常に面白いなと思っていました。当時はまだ全国規模の100円均一ショップもありませんでしたから、全ての商品の価格が同じというのが驚きでしたね。
お客様の立場として、均一価格だと「お得な商品はどれだろう?」と探す楽しみが生まれますよね。実際に注文して「お値段以上だな、正解」と盛り上がったりもできます。
そしてもちろん、お会計が分かりやすいメリットもあります。
その炉端焼き屋さんは途中で食器を下げない仕組みでした。最後にテーブルに載っているお皿やビール瓶を数えてお会計をする。今どれぐらいの金額か一目で分かるし、簡単に計算できるのが良かったですし、画期的でしたね。
そういう客の立場としての原体験があったので、「均一価格にすればお客様に絶対喜ばれるな」という自信がありました。
──実際のお客様の反応はどうでしたか?
最初の1年間は3種類の値段で提供していましたが、均一価格にしてお客様にすごく良い反応をもらえました。
値段を一つにすることで「安さ」がより伝わった、ということもありますね。当時はプロモーションを一切していなかったためお客様の口コミで「鳥貴族」が広がっていきました。どんどん忙しくなって、「開店即満席」というようなお店に育つことができました。