ビジネス

2023.01.06

鳥貴族社長に聞いた「安くておいしい」はどう実現しているか

都内中央区日本橋「鳥貴族 東京八重洲口店」にて


休業要請はなかったのに休業


──コロナ禍でお店を閉めざるを得なかった時期についてお聞かせください。

2020年の4月に最初の緊急事態宣言が発令された際、真っ先に「人命第一」を考えました。自分のお店が営業することによってスタッフ、お客様から感染が広がることは避けなければいけない。ですから同業他社の中では早くに休業宣言を出しました。

最初の緊急事態宣言のとき、休業要請はありませんでした。ですがどんな恐ろしい感染症か分かりませんでしたし、お店、会社よりも人の命を守ることを優先しましたね。

──コロナが落ち着いて以降、「鳥貴族」にはずいぶんと早く客足が戻っているように見えます。

コロナ前から団体のお客様が年々減少していて、小グループのお客様が増えていたんです。

「鳥貴族」は元々、1組あたりのお客様は2、3名だと想定していました。「2、3名のお客様にとって最高のお店にしよう」というコンセプトがあったんです。

創業時、チェーン店の総合居酒屋は主に団体客を取り込んで売り上げを伸ばしていました。そういったところと直接対抗しても仕方がないと思ったので、私たちは逆に少人数をターゲットにした店作りを目指してきました。

コロナが落ち着いてきているものの、大人数で飲むのがためらわれる空気は残っています。そういう時代に、私たちの業態がたまたま合いましたね。この3年間で1組あたりの少人数化が加速したように思います。

また、最近は物の値上がりが続いており、お客様の財布の紐もかたくなっています。

実は「鳥貴族」は居酒屋チェーンの中で客単価が最も低水準なんです。決してお客様の滞在時間が短いわけではなく、1品ごとの価格の安さでそうなっています。5月に行った価格改定でも、そこだけは変わらないようにしました。価格の面についても、時代に合ったのかもしれませんね。

──全面休業しなければならなくなった際、ここまで客足が回復することは想像できましたか?

休業要請解除以降の戻りについてはスタッフも含め、自信を持っていました。実際数字も上がってきましたし、お客様からの「待ってたよ!」という声も多くいただきました。私たちの存在意義を確認できましたね。

──コロナ禍でもあくまでも「居酒屋」には存在意義があると。

400年前に居酒屋というものが日本に生まれて、200年前に初めて「居酒屋」という屋号ができたんです。当時日本で一番多い飲食店が居酒屋でした。それが今日まで、こうして存在し続けているということは、必要とされているんだと思います。ですから一過性の感染症でなくなるはずがないんです。
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インタビュー=市島晃生 文=松尾優人 編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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