「これが350円でいいの?」も
──メニューを見ると「メガ金麦」など、「これが350円でいいの?」と思わせる商品がいくつもありますが、そこにはどのような戦略があるのでしょうか?
「これが350円なのは、当たり前だよね」と思われる商品ばかりを揃えてもインパクトがないですよね。お客様にサプライズを与えられる商品も揃えながら、店側の利益になるような商品も揃える。そういうマージンミックスを意識してメリハリをつけた方が、お客様の反応も良いですね。
──鳥貴族は「安い」というイメージが大きい一方、国産鶏肉の使用や店内での串打ちなど味へのこだわりも強くうかがえます。
創業当初から大衆価格を目指していました。当時は居酒屋ブームでしたが、その頃の居酒屋には冷凍食品が中心の「安かろう、不味かろう」という店も多くありました。特にチェーン店ではそのイメージが強かったので、どのように払拭していくかが課題でしたね。そのために食材は全て国産にしようと。そうすればお客様にとってのコストパフォーマンスが良くなりますよね。
──「安くて良いものを使う」は、外食産業の共通の目標だと思うのですが、「鳥貴族」が実現できている理由は何でしょうか。
創業当時は「貴族焼」や「釜飯」といった商品はコストがかかりすぎて出せなかったんです。店舗数を拡大してスケールメリットがつくれるようになって、お得感のあるメニューが入れられるようになりました。
最初は「がまん」だった
──最初の頃は「がまん」だったということですね。
1号店でオーナーと店長を掛け持ちしていた時期はひたすら、がまんでしたね。店舗数を増やしていくことでコストが下がり、利益も生み出せるようになってきました。そうしてメニュー面でも理想に近づいていった感じです。
──たくさん仕入れることで値段交渉がしやすくなったということでしょうか?
それもありますし、鶏肉に絞っているのも大きいですね。総合居酒屋のように牛、豚、鶏、それに加え魚も取り揃えるとなるとどうしても仕入れが分散してしまいますよね。私たちは鶏肉に集中することで大量に仕入れ、コストを下げることができます。
──そういった戦略は若い頃からお持ちだったのでしょうか?
私がビジネスモデルとしてヒントを得ていたのはスーパーマーケット、特にダイエーの創業者である中内㓛氏でした。
当時はメーカーの力が強かったんです。けれど小売りはお客様が本当に喜んでくれる価格で商品を提供できるよう、対等に交渉する必要がある。そのためには小売り側も店舗数を増やしてスケールを持たなければなりませんでした。
そのような戦略を、私は焼き鳥屋でやりたかったんです。
──焼き鳥屋を始めるきっかけは学生時代のアルバイトだとうかがいました。
高校時代の最初のアルバイトが飲食店でした。2年間続けて、「この道に行こう」と決めました。本当に楽しくて仕方がなかったですから。
そのあと焼き鳥屋の経営者と出会って「自分も焼き鳥屋をやろう」となりました。