AstroXは今年の5月、福島県南相馬市に創設されたばかりの宇宙スタートアップです。現在、日本の人工衛星は海外の大型ロケットのライドシェアに依存しているため、目的の軌道に直接載せることが難しく、放出地点から自力で軌道に移動しなければなりません。そのためにはロケットエンジンを備えて、時間をかけて移動する必要があります。また打ち上げスケジュールも思いどおりにはいきません。そこで、低価格で目的の軌道に自由なタイミングで打ち上げられる日本自前の衛星打ち上げサービスが求められています。
AstroXは、そんな要望に応えるために創設されました。AstroXが開発を進めているのは、気球で成層圏までロケットを持ち上げてから発射するロックーンと呼ばれる方式の衛星打ち上げシステムです。古くから研究されている方式ですが、衛星軌道投入ビジネスに利用された例はありません。またAstroXによれば、日本の東と南が海という立地が衛星打ち上げビジネスに適しているとのこと。実現すれば、大きな宇宙ビジネスに発展することでしょう。
AstroXが南相馬を拠点に選んだ理由は、原発事故の被災地であり長年にわたり避難指定区域だった南相馬に相双オフィスを開設したばかりの、宮城県を拠点とするベンチャー投資企業スパークルからの熱いラブコールにあります。福島の復興と東北の新たな経済循環の構築を目指してスタートアップの誘致を進めているスパークルは、世界規模の宇宙開発市場に挑戦する企業としてAstroXに期待を寄せています。
AstroXは、日本大震災と原子力災害で失われた浜通り地域などの産業回復を目的とした新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」推進機構主催の「令和4年度 Fukushima Tech Create」に採択されました。