経済・社会

2022.12.14 17:00

米CPI上昇率が7.1%に減速 インフレ収束にはなお不透明感

Getty Images

米労働省が13日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月に比べ7.1%上昇した。伸び率は昨年12月以降で最も低くなった。消費者にとっては明るい兆しだが、家賃や自動車保険料、教育費などが引き続き大幅に上昇していることから、エコノミストらは投資家に、しつこい物価高(インフレ)がようやく収まってきたとはまだ過信しないほうがよいとくぎを差している。

11月のCPI上昇率は市場予想の7.3%を下回り、10月の7.7%からも減速した。前月比でも0.1%の上昇にとどまり、市場予想(0.3%上昇)よりも低かった。

クアドラティック・キャピタル・マネジメントの創業者、ナンシー・デイビスは11月のCPIデータについて、インフレの減速を示すものではあるものの、現在の物価上昇率は米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%の3倍超であり、依然として「かなり高い」と指摘。「FRBがウイニングランをする時期ではない」とコメントしている。

労働省によると、前月比0.6%上昇した家賃の伸びが全体の物価上昇の「群を抜いて」大きな要因になった。エネルギー価格下落の影響を相殺するかたちにもなった。

食品も全体平均を上回る前月比0.2%の上昇だった。肉は0.6%下落したが、穀物や乳製品、果物が引き続き大幅に値上がりしたことが響いた。

このほか、レクリエーション(ペットサービスとケーブルテレビがそれぞれ前月比約1%上昇)、自動車保険(1.1%上昇)、教育(0.3%上昇)なども全体の物価を押し上げた。

利上げペースは減速の観測


パンテオン・マクロのチーフエコノミスト、イアン・シェパードソンは、11月のCPI上昇率が市場予想を下回った要因として、ガソリン価格(前月比2%下落)と中古車価格(2.9%下落)の低下を挙げている。また、11月に3%下がった航空運賃は、ジェット燃料価格の下落を受けて今後数カ月で「さらに大きく下がる」と予想している。

シェパードソンはその一方で、失業率の小幅な悪化を招かず物価上昇率がFRBの目標の2%まで下がるには、賃金が全体的になお高すぎると指摘している。

エコノミストのなかには、FRBは物価高を抑え込むための積極的な利上げによって不要なリセッション(景気後退)を招くおそれがあるとする向きもあるが、多くの人はインフレが十分に鈍化したとはまだ確信を持てていないようだ。

バンク・オブ・アメリカのマイケル・ギャペンは、サプライチェーン(供給網)をめぐる状況の改善が遅れた場合、インフレはFRBの予想以上に長引く可能性があり、現行の政策ではおそらく「緩やかな」リセッションを進行させていく一方だろうと述べている。

FRBは13日から年内最後となる連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、その結果を14日に発表する。前回までは4会合連続で0.75ポイントという大幅利上げを決めていたが、ゴールドマン・サックスは今回は利上げ幅を0.5ポイントに縮小し、それに続いて来年は0.25ポイントの利上げを3回行うと予想している。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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