テクノロジー

2022.12.16 14:00

溶岩の海に覆われた「ダイヤモンド」の惑星が誕生した理由

かに座55番星e(ヤンセン)の想像図。かに座55番星aを周回する系外惑星であり、地球の8.6倍程度の質量であると推測されることから「スーパーアース」と呼ばれている(Getty Images)

かに座55番星e(ヤンセン)の想像図。かに座55番星aを周回する系外惑星であり、地球の8.6倍程度の質量であると推測されることから「スーパーアース」と呼ばれている(Getty Images)

ここ数十年で、宇宙は惑星で満ち溢れていることが明らかになり、天文学者たちは数百個単位で星表(カタログ)に収録し始めている。これまでに発見された惑星のほとんどは、人を寄せつけないほど過酷な環境で、中には見れば見るほど地獄のように見える惑星もある。

その一例が「かに座55番星e(55 Cancri e)」でJanssen(ヤンセン)とも呼ばれている太陽系外惑星だ。この惑星は恒星であるかに座55番星(コペルニクス)の非常に近くを公転しており、その1年はわずか18時間で、温度は2000度以上にまで上昇する。

このような極限状態に長く耐え続けてきたことから、科学者たちはこの灼熱の世界の内部はダイヤモンドで満たされ、表面は溶岩の海で覆われていると考えている。

あのマウナロア火山も、宇宙スケールの火山活動の中ではマイナーリーグのチームに思える。

恒星の近くに比較的高温の惑星がたくさん存在するのには理由がある。それは、恒星の近くを回る惑星を見つけやすいという私たちの技術があるためだ。事実、これまでに発見、収録された系外惑星の多くは、恒星のすぐ近くを公転する巨大惑星のいわゆる「ホット・ジュピター(灼熱巨大惑星)」である可能性が高い。質量が大きく近くに光源があることが、それらの惑星を非常に見つけやすくしている。

そういうわけで、かに座55番星eは恒星のきわめて近くを周回する小型の岩石質惑星の最初の例の1つとして、重要な系外惑星である。

現在、研究者たちは、アリゾナ州のローウェル・ディスカバリー望遠鏡にあるEXPRES(EXtreme PREcision Spectrometer、超高精度分光計)と呼ばれる最新ツールを使って超高精度の測定を行うことで、この地獄のような世界をより詳細に解明しようとしている。

研究者たちはかに座55番星の赤道に沿って周回しているこの惑星が、かつては遠方を周回していたが恒星およびこの特殊な星系の他の天体の引力によって現在の位置に引き寄せられた可能性が高いことを発見した。

この星系は地球からわずか40光年の位置にあり、主系列星であるかに座55番星と赤色矮星の組み合わせになっている。さらにこの連星系には、系列の中で大きく異なるさまざまな軌道を持つ系外惑星が少なくとも5つ存在している。

Nature Astronomyに掲載された、Flatiron Institute’s Center for Computational Astrophysics(フラットアイアン研究所数値天体物理学センター)のリリー・チャオ率いる新たな研究は、これらの「変わり者家族」同士の相互作用によって、ヤンセンが現在の耐え難い軌道に移動させられたと推測している。

ヤンセンは押され、引っ張られ、つつかれて現在の位置に落ち着いたが、たとえ元の軌道にいたとしても「私たちの知る何者も表面で生きることができないほど高温だった可能性が高い」とチャオは述べている

何というダイヤモンドの無駄遣いだろうか。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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