この考え方は、何も飲食物に限ったことではなく、衣類やバッグなどに使用される動物由来の「革」にも当てはまる。実際に、国連工業開発機関(UNIDO)によれば、革製品産業は石油産業に次いで2番めに地球を汚染する産業だという。
こうした動物由来の革製品を減らす目的で生まれたのが、DOLEが開発プロデュースした代替レザー製品「ピニャテックス」だ。世界最大級のパイナップル生産業者が、パイナップルの葉っぱを活用して開発したヴィーガンレザーである。
Dole x Ananas Anam l Piñatex I Cannes Lions 2022
この取り組みは、2022年6月にフランスで開催されたカンヌライオンズ2022で、ビジネス・トランスフォーメーション部門グランプリなどを受賞した。カンヌライオンズとは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つアワ−ドである。
世界80カ国200以上のブランドで採用
フィリピンでは毎年250万トン以上のパイナップルが生産されるが、出荷量1トンにつきその3倍の3トンの葉っぱが捨てられている現状がある。さらに、それらの不要な葉っぱが放置されて腐敗していくとメタンガスも発生する。これは、二酸化炭素の20倍以上、地球環境に害を及ぼすとされているガスだ。
「Dole x Ananas Anam l Piñatex I Cannes Lions 2022」より
そこでDOLEは余った葉っぱを活用しようとAnanas Anamという研究所と協働し、葉っぱを使用したレザー「ピニャテックス」を生み出した。これまで代替レザー製品と言えば、合成皮革などプラスチックを素材とするものが多かったのだが、より環境に優しい素材の開発に成功したのだ。
ピニャテックスは、H&M、NIKE、BOSSなど有名ブランドをはじめとして、世界80カ国200以上のブランドで採用されている。パイナップル農家に副収入を提供することにもつながった。
筆者も現地で出席していたカンヌライオンズ2022の贈賞式では、この事例がビジネス・トランスフォーメーション部門のグランプリとなった理由について、当該部門の審査委員長が「なによりも莫大な利益を生み出しているからだ」と発言していた。具体的な利益額は不明だが、大きなインパクトを残したことは間違いないだろう。
「Dole x Ananas Anam l Piñatex I Cannes Lions 2022」より