ビジネス

2023.02.01

地上でも活きるCAの「動線スキル」「ジャストインフォの知恵」

IPGGutenbergUKLtd / Getty Images

機内はチーム戦なので、誰か1人に負荷がかかりすぎてしまえば、そのしわ寄せが全員に回ってくることになります。そのため、誰もが自分だけ楽をしようとは考えておらず、どうすれば一番安全に質の高いサービスをして無事着陸できるかという同じ方向にベクトルが向いているのです。

新人時代は、早くタスクを終わらせないといけないと焦ってしまい、1人で黙々と動いてしまいよく注意されたものです。

逆に後輩を持つようになってからは、側から見ていると「何でまだこんなに仕事が終わってないんだろう?」と思ってしまうような場面でも、情報共有をしてもらうことで、「人一倍笑顔で歩いているからお客様から色々な頼まれごとをしていて大変なんだな」と状況を理解することができ、「それなら私が代わりにそれをやるから、先にこっちをお願いできる?」など、よりスムーズで効率的な方法を提案することができるようになりました。

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Akarawut Lohacharoenvanich / Getty Images

「ジャストインフォ」は家庭力アップにも役立つ

密度の高い情報共有をするためには、絶対に必要なことだけではなく、一見無意味なことのように思える情報も日常的に共有することが大事です。

これが、重要な鍵を握ることもしばしば。

機内では共有するほどでもないかもしれない情報も共有しやすくするために、「ジャストインフォ(Just Informationの略)」という言葉があります。

これによって、「ジャストインフォですが、7Aのお客様は以前ニューヨークに駐在されていたそうです」といったように、共有するかしないか迷うレベルのことでも独り言感覚で共有することができるようになります。

ジャストインフォから重大なミスを防げたケースや、素晴らしいサービスに繋がって表彰された事例はたくさんあります。

そして、これは家庭でも応用できると、子育てをしながらつくづく思っています。

家庭とはいわば一つの飛行機に乗っているようなもの。パパは仕事、ママは家事、子供は勉強、などそれぞれが個人プレーでは、お互いの大変さを理解することができずに、「自分ばかり大変」となってしまいがちです。

そこで大切になってくるのが、情報共有スキル。しかも、必要な情報だけを共有するのではなく、ジャストインフォのような小さな情報もこまめに共有していることで、より深く相手の状況や気持ちを理解できるようになります。

しかし、元CAでそれを痛いほど分かっている筆者でも、日々の忙しさの中でなかなかうまくできないと悩むこともよくあります。情報共有というと誰でもできる当たり前のことのように感じてしまいますが、これも立派なスキルの1つ。磨く努力が必要です。



清水裕美子◎日本航空(JAL)の客室乗務員として国際線ビジネスクラス、ファーストクラスなどを含め約5年乗務する。退職後はCA流美容コンサルタントとしてセミナー、メディアなどで活動するほか、日本初のCAが発信する総合情報サイト「CA Media」を立ち上げる。著書に、『ファーストクラスCAの心をつかんだ マナーを超えた「気くばり」』(青春出版社、2020年7月刊)など。

文=清水裕美子 編集=石井節子

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