清水氏は「CA時代に身につけたスキルをその後の人生で多いに役立てている」という。
本稿では、狭い機内での「動線」「情報共有」のスキルについて振り返りつつ、現在は家庭人でもある清水氏に、日常でそれらのスキルがどう役立つかをアドバイスしてもらう。
機内という不便な環境下で磨かれる「動線スキル」
優雅に働いているイメージのあったCAですが、実際にCAになり驚いたことの一つが仕事の多さ。安全管理から機内サービスまで、着陸までの限られた時間でこんなにも凝縮された仕事をどのように遂行すれば良いのか、最初は本当に謎でした。その謎を解く一つの鍵となったのが「動線」です。狭い機内にはまるでパズルのように備品が収納されていて、必要なアイテムが使用する場所から遠いところに収納されていることもよくあります。
その都度、全長約70mもある飛行機を行ったり来たりしていると大きな時間のロスになってしまいますし、通路を何度も行ったり来たりするとお休み中のお客様の迷惑になってしまうこともあるので、CAたちは常にいかに無駄な移動を少なくするかと「動線」を意識して働いているのです。
狭い、必要なところに必要なものがない、時間も限られている、といった不便な環境下だからこそ、必要に迫られて磨くことができた「動線スキル」。
逆に、あらゆることが便利な現代では意識しないと磨かれないスキルです。
がむしゃらに頑張ってる感じはないのに、なぜか仕事を効率よくこなしている、という人には、少なからずこの動線スキルがあるはずです。
動線効率を最大化するのは「情報共有スキル」
動線を考える時に、その動線内で他にできることがないかを考えるのはもちろん大切ですが、それ以上に効果があるのが周囲との情報共有。1人でできる動線の効率化はたかが知れていますが、周囲と協力すればその効果は何倍にもなるのです。
例えば、機内前方で働いているCAが機内後方に取りにいきたいアイテムがある時、ついでに持ってこれるものがないか考えるのは当たり前ですが、ここで一緒に働いている仲間に声をかけることがポイントです(声をかけずに1人で後ろに行ってしまうと怒られます)。
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「今から機内後方に○○を取りに行きたいのですが、一緒に持ってくるものはありますでしょうか?」など声をかけると、「入国書類が足りなくなっちゃったから後ろで余ってたら持ってきてくれる?」、「途中で10Aのお客様にこのコーヒーをお願いできる?」などその動線内でできる仕事を頼まれることがほとんどです。
逆に、「今から後ろに行く用事があるので、ついでに持ってきますよ」と言われることもあります。