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Forbes JAPAN SALON

2022.12.16

“従業員の幸せ”が充実した法的サービスを生む

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アクロピース 代表弁護士 佐々木一夫

弁護士事務所アクロピースの代表を務める佐々木一夫氏。「日本一の弁護士事務所をつくる!」と宣言し、弁護士とパラリーガルの垣根を取り払い、一人ひとりがピースとなって団結することを重視する氏の言動からは、人との繋がりを大切にする誠実さが窺える。その信念の源を探るべく、話を聞いた。


自分の信念に従う


──アクロピースを創業するに至った想いや経緯についてお話しいただけますか?


山口県生まれの千葉育ちで、明治大学で過ごした学生時代は真面目なほうではありませんでしたが、司法試験を目指すと決めてから人生がガラッと変わりました。なんとか合格し、2013年から弁護士として働き始め、2015年1月1日に独立して最初の事務所を立ち上げました。仕事は順調で、弁護士も6名になりましたが、さらに大きくしようと他の事務所と合併したところ、それがあまりうまくいきませんでした。結局事務所を分け、2018年10月1日から新たな事務所をつくりました。それが現在のアクロピースです。

分裂はとても辛い経験でしたが、僕を信じて一緒に事務所を出てくれた仲間と共に、どんな事務所をつくりたいのか、その頃から真剣に考えるようになりました。日本一の事務所をつくると言って独立したのですが、何が日本一なのか、誰にとっての日本一なのか、この先もずっと考え続けることだと思いますが、いま一番大切にしていることは客観的にも主観的にも、従業員にとって日本一幸せな法律事務所になることです。これを追求することで、顧客サービスの向上にも繋がり、持続的な事務所運営が可能なはずで、結果として皆が一番幸せになると考えています。

弁護士になった理由ですが、漠然とした憧れが具現化していく過程がありました。例えば、ロッキード事件を担当した堀田力氏について知ることがあり、権力に負けず、必ず事件を解決するんだという気合いに感銘を受けました。高校生の時に著書『壁を破って進め』も読んだこともひとつのきっかけになりました。自分の信念に従って仕事ができるという点が、一番の魅力だったのかなと思います。



ただ、僕が絶対合格して弁護士になろうと決めたのは、いまの妻と出会ったからなんです。僕が24歳の時に知り合って、合格しないと結婚できないと思い「来年絶対に合格するんだ!」と決めました。僕は人生でひとつだけ誇れることがあるんです。好きになった女性に、告白しなかったことが一度もないんです(笑)。アタックせずにはいられないタイプ。それは仕事にも通じることがあって、どんなに難しい条件となろうとも、とりあえずボールは投げる。精一杯、一度ぶつけてみるんです。

──想いをぶつけて成し遂げたというエピソードは、信頼にも繋がると思います。合格までの道のりは大変でしたか?

大変でしたが、楽しくもありました。当初、ロースクールの中でも最下位に近い成績でしたが、合格するために上から順番に成績の良い5人に声をかけて、僕と一緒に勉強してくれとお願いしました。そうして一緒に勉強することになって、最後は全員合格したんです。2回目の試験での合格でしたが、本当に楽しかった。他のものはすべて捨てて集中した結果、やればできるんだ、ということが実証できたことは、その後の自信にも繋がりました。全員が合格できたのも嬉しかったですね。いまでも彼らとは付き合いがあります。

──人を巻き込む力もおもちなんですね。そしてプロポーズへ。

研修期間中にプロポーズして、研修が終わって弁護士1年目の時に婚姻届を出しました。



チームとして団結し、補完し合う


──幅広い案件を扱われていますが、近年におけるトレンドというようなものはありますか?

事務所では多様な案件を扱っていますが、僕自身の得意分野は不動産と相続です。不動産は僕の専門のようなもので、相続は不動産と必ず絡んできます。最近は相続発生後の紛争だけではなく、民法的な観点から相続発生前の対策もさせていただいています。高齢者が増えていることもあり、発生件数も増えていますし、法曹業界では今後数少ない有望な分野だと思っています。

──この仕事をしていて良かったなと思うのはどんな時でしょうか?

従業員の成長や喜びを実感した時です。難しい業務ができたり、苦しい訴訟で勝利を収めるのはもちろん嬉しいのですが、それと関係して従業員の成長が見られたり、彼ら自身が喜んでいるな、幸せそうに仕事をしているなと感じられるとさらに嬉しくなります。

──そういう喜びを、彼らとどう分かち合いますか?

めちゃくちゃ褒める方です。僕が怒られるのが好きではないですし(笑)、「良かったね。こんなことできるのは普通ないよ」とか、率直に伝えるようにしています。

──御社では4つのポリシーを表明していますが、それらを重視する理由をお話いただけますか?

まず「着手金を抑えた料金体系」についてですが、そもそも弁護士に支払う着手金が高いので、依頼できないという方が多いという背景があります。しかも結果が保証されていないなかで大金を払うことは、依頼者にとってのリスクとなります。ですから、そこはできるだけ抑えたいと考えました。例えば、昔弁護士が使っていた旧弁護士連合会の報酬基準というものがありますが、弊社はそれよりも圧倒的に安い金額で着手金を設定しています。



「スピードを重視した事件解決」を掲げているのは、昔から弁護士に対して「遅い」、「連絡がない」という不満が多く、依頼者の不満に繋がると考えているからです。確かに時間のかかる手続きはありますし、事件の性質上難しいこともあります。ただ、弁護士側で処理が止まっているとか、最悪の場合には連絡しないというようなケースもあって、弊所ではそのようなことは一切ないようにしています。

「チーム」に関しては、弊所では組織を重視しています。昔は同じ事務所にいても弁護士それぞれが独立した個人事業主のようなものでしたから、知識の共有がされず、例えば弁護士が体調不良に陥るとバックアップが利きません。1人の弁護士の専門性が高くても、他の弁護士に共有されなければその人1人で終わってしまいます。 

弊所では得た経験や知識を皆で共有する、皆で強くなることを重視しています。また、異なる視点から事件を多角的に分析するためにも、担当が2人いることが必要だと考えています。バックアップ体制があることは、依頼者にとっても弁護士にとっても大切です。いま、産休に入っている者がいますが、チームで対応すると、補完し合いながら人間らしい働き方もできます。

最後に「一人ひとりの弁護士がもつ専門性」です。扱う領域について高い専門性をもつことが必要な一方で、法律が扱う範囲は広いので、1人ですべてカバーするのは不可能です。1人でもてる専門分野は2つか3つくらいですから、それぞれが異なる専門性を身につけることによって、事務所として多様な案件の業務に当たれるようにしています。



──今後やりたいことはありますか?

これまで蓄積してきた多くの案件と経験をシステムに落とし込んで、それを顧客向けに使ってもらう方法を考えています。すでにシステム開発会社に相談をしていて、事業の構築を画策しています。

本来、法的なサービスに対する需要はもっとあるはずですが、従来型の弁護士はフィーが高いために、一部の法的需要しか取り込めていないと思うのです。例えばうちの事務所には年間1,500件近くの電話相談がありますが、実際に扱えている案件はその中のほんの15%ほどです。パワハラやセクハラの相談も山のように来ますし、そうした相談に対して「正しい解決法はこれですよ」と応えられるような形にしていけたらと。そのためにも、リーガルテックを駆使したサービスを提供したいと考えています。

──いまはそのようなサービスはないのでしょうか?

企業向けの契約書チェックなどはありますが、個人向けの分野ではありません。例えば離婚や債務回収など、いろいろとつくっていけるのではないかと思っています。僕らが扱っているのは、日本全体の法的な需要の氷山の一角に過ぎません。そうした救えていない部分を救うことができたら、日本のためにもなるし、僕らの業界のためにもなると思います。

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ゴルフで人とつながる楽しみ


──起業したてのアントレプレナーにとって、弁護士は遠い存在かもしれません。何かアドバイスはありますか?

スタートアップの段階では、顧問弁護士に何を任せたらいいのか、どこを見てもらうべきなのかも分からないと思います。お金もないから高い金額も払えないでしょう。そのようななかで、まずは話が合うと感じる弁護士と普通に付き合ってみるのがいいと思います。ゴルフをしたり、ご飯を食べながら仕事の話をして、こんなことで困っているとか、うちの従業員にこんなことがあってと、弁護士というよりは経営者同士の感覚で話をしていると、アドバイスをもらえたり、少しずつ弁護士には何をしてもらえるのかが分かってくると思います。まずは人間関係を築いて、必要なタイミングで契約すればいいのではないでしょうか。



スタートアップも成長して組織や業務フローが確立してくると、弁護士に任せたいことがはっきりしてくると思います。そうなった時には、その分野に本当に強い弁護士に切り替えてもいいでしょう。

──話しやすくて近況を伝えられるような人には、どうしたら出会えるのでしょうか?

僕個人の話だと、ほぼゴルフですね(笑)。

──共通の趣味から仲良くなって、ということですね?

話しやすいし、実際にそこから僕が顧問になった依頼者も何人かいらっしゃいます。趣味と実益を兼ねている感じです。

──スタートアップの社長も、そうしていろいろなところに顔を出して、どこかで弁護士の知り合いができるといいですね。いま仕事以外で一番熱中していることは、やはりゴルフですか?

そうですね。弁護士になって始めて、本気になったのはここ3年ほどですが、楽しくて仕方ありません。もっとゴルフの練習がしたくなり、インドアゴルフの測定機、トラックマンを入れた自分用の練習場をつくろうと考えたのですが、自分が使える時間は限られているので、他の依頼者にも使っていただけたらいいのかなと考え、会員制のインドアゴルフクラブをつくってしまいました。いま、御茶ノ水と武蔵小山の2ヵ所にあります。

都内は練習する場所が少なくて、困っているゴルファーが多いんですね。自宅のそばで練習できる場所が増えれば、ゴルフ業界全体を盛り上げることもできるのではと思っています。


──ゴルフの魅力を教えていただけますか?

まずゲーム自体が面白い。全然上手くいかないのも面白いんですよ。全然上手くいかないけれど、たまには上手くいくし、練習すればじわじわ少しずつ良くなっていくという。なかなか微笑んでくれない感じがいいのかなと(笑)。ベストは82ですがまだまだで、いずれイーブンパーで回ってみたいです。

──体格も良くていらっしゃいますが、もともと何かスポーツをされているのですか?

ずっと野球をしていました。

──そうすると、ドライバーも飛びそうですね。

最初は飛距離にこだわっていましたが、やはり方向性だなと考えて、ある時期から方針を変えました。振れば飛びますが、その分OBも増えてしまうので。

ゴルフは楽しいし、友達ができる。だいたい1日回ったら仲良くなるじゃないですか。気が合いそうな人がいたら、そのまま飲みに行ったりしています。

──よく、ゴルフにおけるメンタル面が仕事にも役立つとおっしゃる方がいますが、いかがですか?

僕はもともと感情的にフラットで、すごく悲しんだり、落ち込んだりしないんです。そういう意味では、ゴルフは向いているかもしれないですね。プラスの感情はどんどん出すべきですが、マイナスの感情はやはり自分に悪い影響を及ぼしますから、負の感情はコントロールしています。自分でも感じないくらい、強くなったのではないかなと思います。



──Forbes JAPAN SALONに入ってみて、どんな印象を受けていますか?

勢いのある経営者の方々とお話することによって、さまざまな気づきがあるかもしれないと思い参加させていただきましたが、実際にそうでした。事業に対する考え方や社員への接し方など、いろいろな話をお聞きしながら自分の考え方を再確認したり、新たな気づきを得たりして、とても良い影響を受けています。

──会員同士でしてみたいことはありますか?

やはりゴルフができたら嬉しいですね(笑)。その他アウトドアはどれも興味があって、キャンプも今年は月2回のペースで行っていますし、釣りもしたいです。登山も趣味なんです。登山が好きだからやろうと誘うと、富士山ならいいよという人が多いので「富士山を登る会」などいかがでしょう? 登ることで、きっと素晴らしい達成感が得られます。

──法的知識をサロンで学ぶというのは?

エヌエヌ生命で相続関係の知識や実際の事例を紹介しながら、会社の経営者向けの相続対策について講演していますが、サロンのメンバーの方たち向けにはそういうものも良いかもしれません。経営者は死んだ後のことも考えないといけませんから。



──最後にメッセージをお願いします。

やはり若い起業家が世の中を変え、革命を起こしていくと思います。サロンには若い方も多いですし、お互いに刺激し合って、推進力になるような関係性を築けたらいいなと思います。


ささき・かずお◎1984年、山口県宇部市生まれ。 私立市川学園高校、明治大学法学部、明治大学法科大学院卒業。 弁護士登録後に法律事務所にて執務したのち、2018年弁護士法人アクロピースを設立して代表弁護士に就任。 現在弁護士7名の事務所に成長し、大手新聞社、保険会社、不動産会社にて講師、執筆多数。相続と不動産(賃貸借、使用貸借、共有)に関し、多くの紛争解決事例をもつ。

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interview & edit by Shigekazu Ohno(lefthands)text by Mari Maeda (lefthands) / photographs by Takao Ota

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