2. リテールメディアは収益の拡大につながる
小売企業は、労働力不足、インフレ、サプライチェーンの問題により、コスト全体の増加に直面しており、中でもEコマースやマルチチャネルの小売企業は、配送やフルフィルメントのコストによる圧迫に苦しんでいます。そのため、利益率の低下に対抗するため、利益率の高い広告ビジネスを収益源に加えるリテールメディア機能を拡充させるなど、これまでにない方法を見出しています。
独自のRMNを立ち上げた小売企業には、Best Buy、Carrefour、eBay、Gap Inc、Home Depot、Lowe’s、Kohl’s、Kroger、Macy’s、Michaels、Nordstrom、Sephora、Target、Ulta Beauty、WayfairおよびWilliams-Sonomaなどがいます。そして、需要の高まりに対応するため、同分野は今後も爆発的な成長を遂げる態勢にあります。
現在、多くの小売企業がリテールメディア機能を提供し、RMNを立ち上げていますが、リテールメディアがブランド広告主に提供する機会についての多くは、まだ表面的なものに過ぎません。
・BCGが2022年3月に発表したレポートによると、2026年までに予測されるリテールメディアの収益の60%~70%は、過去の取引額を上回る純新規のものであり、今後も新規小売企業がリテールメディアに参入することが示唆されています。また、今後数年間、リテールメディア業界では、Amazonや新規参入企業よりも小規模な小売企業が急速に成長するとしています。
ホームページのディスプレイ広告、スポンサー広告、非エンデミック広告などを通じて、リテールメディア機能を構築・拡大し、さらに多くのブランド広告費を獲得するチャンスはまだまだ大きなものがあると思われます。ファーストパーティの顧客データをより効果的に活用し、テクノロジーパートナーと提携してその機能を強化することにより、ターゲットを絞ったリテールメディア体験を提供し、ブランドパートナーの費用対効果を向上させ、CPM(Cost per mile=1000インプレッション当たりのコスト)を高く設定することが可能です。
・2021年10月のCoresight Researchの調査によると、米国と英国の消費者は、ブランドや小売企業によるリテールパーソナライゼーションが充分でないと感じています。米国と英国に拠点を置くブランドと小売企業の約71%は、自社のマーケティングのパーソナライゼーションが優れていると考えている一方で、同じように捉えている消費者は34%に過ぎませんでした。
Coresight Researchの2022年8月の調査によると、現在リテールメディア機能を持つ米国の小売企業のうち52.6%が、10%以上の年間収益の伸びがリテールメディアに起因するとし(図2参照)、55.7%が年間EBITDAの伸びの10~30%がリテールメディアに起因するとしています。