ビジネス

2022.12.14

NFTプロデューサーの周到な戦略は大きな目的のために練られていた──北野唯我「未来の職業」ファイル

Fictionera代表取締役の草野絵美


北野:すごいクリエイターが出てきそうですよね。

草野:うちの長男もNFTに触れる前から、すごくNFTネイティブな感覚があったと思います。彼は朝起きたら、メルカリで自分のもっているポケカ(ポケモンカード)の相場を見るんですよ。

北野:すごいな(笑)。

草野:最近の若い子もリセールバリューがあるかどうかで服を選ぶじゃないですか。タグを必ず付けて綺麗に着て、売って、また買ってという。その感覚がNFTと似ているんです。だから、次世代の子はもっと面白いことをやっていくだろうと思います。Web3で有名になったアーティストも10代後半とか20代前半で、かなり若い人が成功している。もう自分と考え方が違うかもしれない(笑)。

北野:まったく違う進化を遂げた人が、どんどん出てきそうです。

草野:もしかしたら「起業家兼アーティスト」みたいな人が増えるかもしれないですね。



この業界に向いた人材とは?


北野:草野さんの経歴は、次世代のクリエイターのあり方、ビジネスとの共存の仕方を研究しながら実験してきた印象です。

草野:本当に器用貧乏だったんですよ(笑)。ミュージシャンの活動もしたし、唯我さんと同じく広告代理店でも働きました。

北野:以前のインタビューで「NFTの世界は器用貧乏が輝ける場所」と話されていました。あらためてどういう意味ですか?

草野:アイデアにあふれ、いろんなものに顔を突っ込む“多動な人”が向いているからです。Web3は情報がすごく多いし速いから、なかなか網羅できません。誰もが専門家でないからこそ、DeFi(分散型金融)に詳しい人、ゲーム界に詳しい人、NFTアートに詳しい人などが集まる必要があります。

いろんな分野の人たちとのコミュニケーションが好きなことこそ、NFTにおいて重要な条件かもしれません。そうすることで、いろんな角度から冷静に情報を判断できるようになります。まだ発展途上の分野なので、いまは「予期せぬ詐欺」みたいなものもたくさん出てきていますから。

北野:現在、どんなことになっているんですか?

草野:一時期の短期的な商売でやってくる人たちがサーッといなくなったところです。キャッシュグラバー(守銭奴)みたいなプロジェクトは、淘汰(とうた)されていくんじゃないかなと思いますね。私はお金が1銭も入らなくても音楽やアートをつくってきたので、つくり続ける人たちだけが残る、いいチャンスだなと思って粛々とつくっていきます。

北野:つくり続けるのが大事ということですね。

草野:買っている側もすごく目が肥えてきて、投資家みたいになってきていますね。本当にクリエイターの作品を愛している人たちが、これからもお金を払ってくれるのだと思います。
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文=神吉弘邦、北野唯我 写真=桑嶋 維

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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