世界最古200万年前のDNA発見、氷河期の堆積物から

マストドン想像図(Getty Images)


仕事は極めて骨の折れる作業だった。まず、堆積物の中にDNAが隠されているかどうかを確認し、もし隠されていたとしても、粘土粒子や水晶などの鉱物の粒からDNAをうまく切り離して調べることができるかどうかが問題だったのだ。最終的な答は「YES」だった。研究者たちは、その1つ1つのDNA断片を、現代の動物や植物、微生物から収集した膨大なDNAライブラリーと比較した。

そして科学者たちはトナカイ、ノウサギ、レミング、白樺やポプラの木などに由来する動物や植物、微生物の痕跡を発見した。さらに彼らは、氷河期の象であるマストドンが、絶滅する前にグリーンランドまで移動していたことさえ発見した。これまでは、マストドンが誕生したとされる北中米から外には出ていないと考えられていた。

DNA断片の中には、現在の種の祖先として分類しやすいもの、属レベルでしか結びつかないもの、現在生きている動物、植物、微生物のDNAライブラリーに入れることが不可能な種に由来するものなどがあった。

この発見は、DNA検出の新しい時代を切り開くものだ。新世代の抽出装置とシーケンシング装置により、これまでDNA保存には適さないとされてきた堆積物から、極めて小さく損傷した遺伝情報の断片を見つけ出し、同定することができるようになったのだ。

ウィラースレフ教授は「DNAは一般的には、Kap København層に堆積してから過ごしていたような、寒くて乾燥した環境下で最もよく生き残ることができます。しかし、粘土と石英から古代のDNAを抽出することに成功した今、アフリカで発見された遺跡の粘土が、温暖で湿度の高い環境の中で古代のDNAを保存していることも期待できるかもしれません」と結論づけている。

論文「A 2-million-year-old ecosystem in Greenland uncovered by environmental DNA(環境DNAが解き明かすグリーンランドの200万年前の生態系)」は『Nature』に掲載されている。ケンブリッジ大学のサイトにも解説記事がある。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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