22歳だったマフサ・アミニは9月13日、家族と訪れていたイランの首都テヘランで、頭髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用の仕方が「不適切」だとして、道徳警察に逮捕された。
家族やイランの国内メディアによると、アミニは逮捕時、激しい暴行を受けていた。そして彼女は3日後、拘束を解かれないまま死亡した。
この恐ろしい事件が報じられると、イランでは国内各地で、抗議活動が始まった。女性たちは街なかに繰り出し、路上でヒジャブをはぎ取り、自ら髪を切り落とし、「女性、生命、自由」をスローガンに掲げ、抗議の声を上げている。
アミニの死の力は、政権による女性の扱いに対する反発に端を発した抗議活動を、政権交代を求める革命的な運動に発展させ、それを世界中に広く認識させた。それが、フォーブスが彼女を今年の「世界で最も影響力ある女性100人」の一人に選んだ理由だ。
アミニの名は、神権政治を行う現政権の市民に対する弾圧の“同義語”となっただけではない。歴史家で女性の権利を訴える活動家でもあるイラン系米国人のニーナ・アンサリーは、「マフサ・アミニはいまや、イランだけでなく世界の自由の象徴だ」と語る。
1979年に起きたイスラム革命によって現政権が樹立されたその直後から、テヘランでは何千人もの女性たちが、ヒジャブや全身を覆う衣服の着用義務にとどまらない、数々の政策に抗議してきた。
米国を拠点とする人権NGO、アブドラフマン・ボロマンド・イラン人権センターのロヤ・ボロマンド事務局長は、「革命後に施行された法律は基本的に、男女差別を制度化するものだった」と指摘する。
「イランでは、女性の生命には男性の生命の半分程度の価値しかありません。女性の証言の価値も、男性の半分です。女性たちには離婚を申し出ることも、子の親権を持つことも認められていません」