憧れの人に「やしきたかじん」を挙げ、名古屋在住でありながら、最近では全国のバラエティ番組にも進出している。活躍の場を広げる呂布カルマとは、何者なのか──。彼のホームクラブのある名古屋・新栄町で話を聞いた。
後編:ひろゆきを論破 ラッパー呂布カルマの生半可じゃない勝ち方
ACジャパンのCMはドッキリかと思った
コンビニのレジで、高齢女性が財布からお金を出すのに手こずっていると、背後の列にはオールバックにサングラスをかけた男性の姿が。タン、タンと足踏みが聞こえると、男性は突然ラップで歌い出す。
「Yo!もしかして焦ってんのかおばーさん 誰も怒ってなんかない/アンタのペースでいいんだ 何も気にすんな/自分らしく堂々と生きるんだ」
さらに高齢女性もラップに応戦し、最後はレジ店員の女性も加わって「たたくより、たたえあおう〜」と歌う。
これが相手をディスらない「寛容ラップ」として知られ、Twitter上でも好意的に受け止められ、トレンド入りもした。
このCMに意外性を感じたのは、私たちだけじゃなかった。呂布本人も「最初ドッキリかと思いましたよ。でも俺に仕掛ける訳ないし......」と振り返る。撮影後も発表されるまで不安だったという。「自分自身、何度もTwitterで炎上してますし、ボロクソ言われるんじゃないかと思って。でも好意的に受け止められたのは、自分でも意外でした」という。
一方で、台本に沿って、呂布がラップを書いたが、CMを見て「呂布カルマってめっちゃいい人じゃん」と言われることについては否定する。「CMだけ見て俺のパーソナリティがああだと思われることもあって、怖くなっちゃいますよね。だって逆もありうるじゃないですか。悪役だったら悪く言われると。でもすごくいい人ではないです。レジは一応待ちますけど(笑)」
強烈なパンチライン、独自のスタイルができるまで
呂布と言えば、2015年ごろから数々のラップバトルを勝ち抜き、有名ラッパーを輩出した「フリースタイルダンジョン」では、初代のR-指定やDOTAMAに続き、2代目、3代目モンスターとなった。韻を踏むことだけに固執せず、強烈なパンチラインを効かせる独自のスタイルで、コアなファンからも注目されてきた。アンダーグラウンドのヒップホップの世界に身を置き、地元・名古屋で自身が共同代表を務めるレーベル「JET CITY PEOPLE」から楽曲を発表している。
そんな呂布には、意外な過去がある。元々は漫画家志望で、名古屋芸術大学美術学部へ進学。大学時代は、『ヤングマガジン』など青年誌で連載をしたすぎむらしんいちの作品などを好んだ。「全般的に流行っているものアレルギーがあり、メジャーじゃない作品の方が好きで、ギャグ漫画風だけどおしゃれでしたね」と語る。