研究チームは、コロナ禍の前後に撮影された163人の子どものMRI(磁気共鳴映像)スキャンを使用した。その結果、研究者らは子どもたちの脳の老化プロセスが加速し、通常よりもはるかに早期に脳の構造が変化していたことを突き止めた。
子どもの脳の構造におけるこの種の加速的な変化は、暴力やネグレクト(育児放棄)、家庭崩壊や混乱を経験した子どもの間で以前から見られていた。加速的な脳の成熟の一部には、大脳皮質の厚さの減少がある。大脳皮質は、計画や、注意を払うことまたは作業への集中、マルチタスク、指示の記憶など実行機能スキルをつかさどる。
研究者らは精神医学誌「生物学的精神医学:グローバル・オープン・サイエンス(Biological Psychiatry: Global Open Science)」に公開された論文で「封鎖中の社会的孤立と対人距離確保の結果として、ほぼ全ての若者が通常のルーティンから大きく離れるという困難を経験した」と述べ、「それに加えてコロナ禍の間は、経済的な負担や身体的な健康への脅威、家庭内暴力の増加が驚くほど一般的になった」と語った。
163人の子どものうち103人は女の子で、全員がサンフランシスコ・ベイエリアに住んでいた。研究者らはMRIスキャンの実施後、2016年11月から2019年11月の間に子どもたちを2年に1度集めて追跡評価した。
しかし、世界的な都市封鎖を受けて分析は中断された。研究者らはその後、2020年に脳の構造がどう変化したかを分析するべく、コロナ禍の前後に撮られたMRIのスキャンを比較した。
研究者らは「新型コロナウイルスの広まりは若者の心の健康に悪影響を与えた。新型コロナウイルス感染症の流行期に評価を受けた思春期の若者らは、より年齢が上か、子ども時代に顕著な逆境を経験した人に見られがちな神経解剖学的な特徴を持っていた」と述べた。
研究者らは「コロナ禍の前に評価され、慎重にマッチさせた人と比べると、コロナ禍の間に評価を受けた思春期の若者は両側海馬とへんとう体の体積がより大きかった。こうした構造の体積は通常思春期に増えることから、こうした神経系の変化は新型コロナウイルスが拡大する中で脳の成熟が加速したことを反映しているかもしれない」と補足した。
(forbes.com 原文)