それに比べると深刻度は低くなるものの、インフレも問題だ。物価上昇に応じて資産を増やしていきたい場合、米国債を買うのは悪手になる。インフレが沈静化しない限り、買い手は実質的に損をすることになるからだ。
さらにジョー・バイデン政権は、ウクライナに侵攻したロシアに対する制裁で米国債を「武器化」している。これまでの財務長官も金融制裁の実施を監督したことはあったが、今回のような政策の対応にあたるのはイエレンが初めてだ。
ロシアによる米国債へのアクセスを遮断することで、財務省は非常に安全な資金避難先としての米国債の地位を損なうリスクを負った。その地位はドルを世界の基軸通貨にすることに寄与してきたものでもある。
イエレンが後世評価されるレガシー(遺産)を残せるかは、ロシアに対する制裁を実施しつつ、米国による金融秩序から逃れる口実をほかの国々に与えないようにできるかにかかっている。
こうした事情から、イエレンは最終的に、米国史上最も大きな力を振るった財務長官になるかもしれない。その場合、在職期間も平均より長くなりそうだ。
一方で、米経済の悪化の責任を取らされるかたちで、自身の望むよりも早く退任を余儀なくされる可能性もあるだろう。
(forbes.com 原文)