ビジネス

2022.12.10 11:00

ワールドカップ、ABEMAのニンマリと「蒙牛乳業」のトホホ


この中華系の乳製品の企業だけでなく、マクドナルドにも違和感を感じた。長年のFIFAパートナーではあるが、現地ではアクティビティが何もなされていないのである。場内での出店もなければ、どのようにその権利を活用しているのかを見つけることはできなかった。長年にわたって年間で数十億円も支払う意味合いが理解できないと言ってもいい。

私の感じたズレは他にもある。秋田県よりもやや狭い面積に相当の国土カタール。1930年に始まったワールドカップの開催国としては、もっとも小さい国となり、その狭い国土の中の首都ドーハに全世界からのファンが一気に押し寄せた形となった大会であるが、ワールドカップ目的での来訪客はメトロ・バスの費用は無料という待遇。どこに行っても交通費はかからない状態で、タクシーもそこまで高額ではない。

基本的に街中で遭遇するのはパキスタンやインド出身の方々。タクシー運転手によると、数年前から多数のパキスタン労働者が流れ込んでおり、パキスタンにいるよりも仕事があるという。しかし、大会が終わったらどうなるかわからないと不安が隠せない様子だった。

さらに今回のスタジアム建設において、6500人とも言われる死者が出ており、その多くがパキスタン・インドから来た低賃金労働者だという。メトロ・バスを無料にするのであれば、1回の乗車につき1ドルでも搾取して、彼らの人件費に充てるべきではないか? つまり、当局はスタジアム建設の現場に目が届いていないというか、無関心なのだ。

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FIFAパートナーとワールドカップパートナー全14社のうち、中国、韓国、インド、シンガポールのアジア企業で7社を占めるようになった。さらに次大会は北米とその他北中米の共催となっており、複数開催国にした理由はより多くのスポンサーを集めるためだという。

スポーツ界は常にお金のあるところからどのようにしてスポーツコンテンツにお金を流すかと考える。一方、お金を出す側のメリットは、いかに多くの視聴者や足を運ぶコアファンを囲い込むか。それを自社の売上にどのように繋げるのか。それを実践するのがスポーツマーケティングの腕の見せ所だ。

この点からいくと、日本でも話題になったABEMA TVは、スポンサーではないが、その放映権をうまく活用して顧客を囲い込めるだろう。どこかのタイミングで、試聴条件にマネタイズを組み込むことは当然考えられる。200億円とも言われる放映権獲得に対し、1700万人とも言われる視聴者数を抱えていることからすると、仮にその半数の視聴者数が一月分として3000円支払ったとしても255億円。

当然放送におけるコストが放映権獲得とは別に必要にはなる。それでも十分であることは想像に難しくない。

放送において放送倫理・番組向上機構(BPO)のような苦情や放送倫理上の問題に対応する組織は持たないがゆえ、インターネットテレビは比較的自由な発言が許される。今回のワールドカップの放送でファンの心をがっちり掴んだと言える。マネタイズのタイミングやその手法には注目すべきだが、条件は整っている。

見方を変えれば、ABEMAはスポンサーにならずして放映権を獲得し、さらにマネタイズまで仕上げられたら、その手腕は完全な勝ち組だ。多額の投資案件ではあったかもしれないが、フル活用によって手にすることができる将来利益(目先の利益だけでなく、その先も連動して生まれてくる利益)も見えてくる。

オリンピック含めた世界的なスポーツコンテンツにおいて、ブランディングなどと言う見栄えの良い謳い文句でカムフラージュさせた多額のスポンサー案件をどのように扱い、どのように活用するかは、お金を出す側の手腕次第。単なる多額の浪費となる恐れを含む高リスクな「投資案件」でしかない。スポーツコンテンツの活用は、そこに気づくべきだ。

文=酒井浩之(MANAGEMENTIVA)

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