ビジネス

2022.12.09 09:00

負債数億円から再起 「情熱派」CEOの人生をかけた事業が急成長


頼れる人間がいなくなった小野里は、知り合いのツテをたどり、ECサイトの制作ができる企業に案件を任せる。制作を委託して、小野里は別の案件に集中したが、再び試練が訪れる。

負債は数億円、融資もストップ


締め切り3カ月前にして、サイトの中身は手をつけたばかりの状態だったのだ。

「血の気引いたよ。いつも『やってます』と報告を受けていたのに、実は全然進んでなかった。どうにかしようと、いろんな人に外注したんだけど、書かれたコードが超独特なオリジナルでさ……。誰も手が出せなくて、結局納品できずに、先方に頭を下げて2カ月遅らせてもらった。そこからはもう死ぬか生きるかの『デスマーチ』だったよ」

家に帰らず、1日の睡眠時間は会社のイスで30分。社員も交代で仮眠をとりながら必死に改善を進めたという。毎月借り入れた金が消え、さらに融資依頼を繰り返すことでどうにか食い繋いだ。しかし、それでも終わらなかった。

「僕って普段は異常に元気なの(笑)、メンタルも強いほうだと思うし。でも、苦しい状態が続いて、負債も数億円になって……。そうするとさすがに精神崩壊してくるんだよね。死んだほうがお金を返せるかと思って、どうやったらいくら保険金が降りるかを検索したこともあるよ」

小野里寧晃

小野里は企業に再度の遅延を申し入れ、半年後にサイトの公開に漕ぎつけたが、完成度は満足してもらえる状態ではなく、サーバーダウンなどが起こる欠陥品だった。少しでも完成度をあげようともがいたが、20人ほどいた従業員は疲弊して全員退職。「社員ゼロ」にまで陥り、ついには銀行からの融資もストップしてしまう。

「もう終わりにしようかな……」そう思った時、幸か不幸か、先方の企業から「もう他の企業に任せることにしたから」と契約打ち切りを宣告される。ここで小野里の1年以上にわたる苦境は期せずして終わる。

「僕みたいな、情熱が先行する経営者は、具体的な夢を持ってない事業で社員を雇ったり、案件を受けたりしちゃいけない。生活のためなんかに会社経営しちゃダメなんだよ」

そこで、小野里は再起をかけた事業転換に踏み切る。それが「スタッフスタート」というサービスだった。
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文=露原直人 撮影=林孝典

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