ライフスタイル

2022.12.24 14:30

スパイスやハーブ、ピーナッツを食べて腸内フローラを養えばもっと健康に

料理用の新鮮なハーブとスパイスのカラフルなコレクション。Getty Images

料理用の新鮮なハーブとスパイスのカラフルなコレクション。Getty Images

より健康になるための簡単な方法は、腸内細菌叢(腸内フローラ)を適切に養い、細菌たちに面倒を見てもらうことだ。

同じ研究室(ただしわずかに異なる研究者のチーム)から最近発表された2件の栄養に関する研究は、食生活のほんのわずかな変更が、腸内の微生物群の多様性を高め、その結果、全般的健康を改善しうることを発見した。具体的には、スプーン1杯半の乾燥ハーブとスパイスを日々の食事に加えたり(参照),毎晩寝る前にピーナッツを28グラム食べる(参照)ことで、腸内細菌の全体的生物多様性が増加する。

「研究によると、腸内細菌の種類の多い人は細菌多様性の低い人よりも健康状態が良く、食習慣も良いことがわかりました」と、ペンシルベニア州立大学で栄養科学のエヴァン・パー大学教授(Evan Pugh University Professor)の称号を持つ栄養学者ペニー・クリス=エサートンはいう。

研究室は特定の食物、栄養素、生物活性成分、食習慣などが心血管疾患および2型糖尿病の予防に果たす役割を研究している。

腸内フローラは、腸の中に住むさまざまな微生物で構成されている。微生物には細菌、古細菌、真菌、ウイルスなどに加え、それらの遺伝子や遺伝子産物も含まれる。腸の中にはおよそ1000種類の細菌種があると推定されており、代謝に影響を与え食物の消化を助け、貴重な腸内空間を占有する有害な細菌を打ち負かすことで病気を防ぎ、免疫システムのより効率的な機能を手助けしている。

日々の食生活が腸内フローラの多様性に影響を与えている。たとえば、過去の研究で研究者らは、ある人が日々の食生活でアーモンド、クルミ、ブロッコリ、アボカド、全粒大麦、全粒オーツ麦などのホールフーズ(未加工の植物性食品)を摂取していることを、糞便中の腸内細菌15~22種の相対存在量を調べるだけで、70~85%の精度で予測できることを明らかにした。これらの食品はすべて食物繊維の源であり、腸内フローラの細菌種の組成を調節する役割を果たしている。

食物繊維に富む植物性食品は、ポリフェノールも多く含んでいる。ポリフェノールは通常上部消化管で吸収されにくい構造的に多様な化学物質であり、食物繊維と同様比較的未消化の状態で大腸に到達する。腸内に入った食物繊維とポリフェノールはいずれも腸内細菌が利用しやすい状態になる。

ハーブやスパイスがポリフェノール化合物に富み、腸内の細菌種の組成に影響を与えることが知られているのはこの理由による。しかし奇妙なことに、ハーブとスパイスの混合を定常的に繰り返し食事で摂取した時の効果を調べた本格的研究はこれまでになかった。


Spicy Herb
スパイスとハーブ(Getty Images)
--{スパイスやハーブを最も多く投与した場合に腸内の生物学的多様性が最大に}--
クリス=エサートン教授とそのチームは、この見過ごしを正すことにした。チームはシナモン、ショウガ、クミン、ターメリック、ローズマリー、オレガノ、バジル、タイムなどを含む24種類のハーブとスパイスの混合物を、心血管疾患のリスクのある被験者グループに与えた。1日に3回、各被験者はスパイス・ハーブ混合物を3種類の投与量(1日当たり小さじ1/8、小さじ3/4強、あるいは小さじ約1 .5)のいずれかのカプセルを食事とともに摂取した。

わずか4週間後、被験者の腸内細菌の多様性が高まり、ルミノコッカス科の細菌が増えたことをチームは確認した。健常人の結腸内にこの細菌群が存在することは、肝臓代謝と免疫機能の健全性と関連している。

想像できるように、スパイスやハーブを最も多く投与した場合に腸内の生物学的多様性が最大だった。

Peanuts
夜食のピーナッツ28グラムが腸内に良い影響を与える(Getty Images)

第2の研究は、ピーナッツの消費が細菌叢に与える影響に焦点を当てた。ピーナッツはマメ科の植物でありナッツ、種および大豆の食品カテゴリーの一部として現在、米国政府が推奨している。ピーナッツは米国で最も多く消費されているナッツだが、腸内細菌叢にピーナッツが与える効果については誰も研究してこなかった。

ピーナッツの実験では、空腹時血糖値の高い成人を対象として、就寝前のピーナッツ28グラムの夜食の与える影響と、クラッカーとチーズという高炭水化物の夜食の与える影響とを比較した(空腹時血糖値は糖尿病の指標であり、就寝時に高炭水化物の軽食を食べた翌朝に高くなる傾向がある)。

この研究では、6週間後に、ピーナッツ実験の被験者はルミノコッカス科の相対存在量が増加し、スパイス・ハーブ実験と同じ結果だった。スパイス・ハーブ実験と同じくピーナッツ実験も、個人の食習慣のわずかな変更が、大きい効果に繋がる可能性を明らかにした。

「これは誰にでもできる簡単なことです」とクリス=エサートン教授が声明で語った。「平均的な米国人の食習慣は理想からかけ離れているので、ハーブとスパイスを食事に加えることで誰もが恩恵を得られると私は考えています。これは、食物中のナトリウムを減らしながら、料理を口当たりよく、実際美味しくする方法でもあります」

「味覚は、人が食べ物を選ぶ最も重要な基準です」とクリス=エサートン教授は付け加えた。

腸内フローラと血圧、体重を含むさまざまな健康要因との関連に関する研究結果は、ルミノコッカス科および細菌全体の多様性の増加が健康に良いことを示している。しかし、もちろん、こうした結果の意味をより深く理解するためにはさらなる研究が必要だ。

「腸内フローラの健康全般における正しい役割を知るために、まだ多くの研究を重ねていく必要があります」

出典:Philip A. Sapp, Penny M. Kris-Etherton, Elke A. Arnesen, Jeremy R. Chen See, Regina Lamendella, and Kristina S. Petersen (2022). Peanuts as a nighttime snack enrich butyrate-producing bacteria compared to an isocaloric lower-fat higher-carbohydrate snack in adults with elevated fasting glucose: A randomized crossover trial(高空腹時血糖値の成人における、夜食としてのピーナッツと、等カロリーの低脂肪高炭水化物の夜食との酪酸菌増加と比較), Clinical Nutrition 41:2169-2177 | doi:10.1016/j.clnu.2022.08.004

Kristina S Petersen, Samantha Anderson, Jeremy R Chen See, Jillian Leister, Penny M Kris-Etherton, and Regina Lamendella (2022). Herbs and Spices Modulate Gut Bacterial Composition in Adults at Risk for CVD: Results of a Prespecified Exploratory Analysis from a Randomized, Crossover, Controlled-Feeding Study(心血管疾患リスクのある成人におけるハーブとスパイスによる腸内細菌組成の調整:無作為化クロスオーバー対照食事摂取実験の事前に特定された探索的分析結果), The Journal of Nutrition 152:2461–2470 | doi:10.1093/jn/nxac201

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事