ダイモンはCNBCの番組で、米国人の銀行口座にある預金総額が1兆5000億ドル(約206兆円)とパンデミック前の3倍超に膨らんでいることに言及しつつ、米国の個人消費は過去1年で10%、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)前に比べると40%増えていると説明。これは米経済が「現在の世界で最も強い」証拠のひとつだと語った。
一方で「ほかのニュースはよくないものだ」とし、「金利上昇やしつこいインフレがすべてを侵食し(中略)、1兆5000億ドルの預金は来年半ばごろには底をつくだろう」と話した。
ダイモンはそのうえで、貯蓄が細るなか、個人消費が落ち込んでいくと「経済を失速させ、穏やかな、あるいは厳しいリセッションを招く可能性が高い」と指摘した。また、地政学的な緊張と、米連邦準備制度理事会(FRB)による性急な利下げの可能性を、米経済が直面する最大のリスクに挙げた。
米商務省の経済分析局(BEA)によると、米国の個人貯蓄率は、景気刺激策として国民に総額9310億ドル(約127兆円)あまりの給付金支給が始まった2020年4月に過去最高の33%超に達したが、今年10月にはわずか2.3%と17年ぶりの低さまで下がっている。
モルガン・スタンレーのリサ・シャレット率いるチームも5日の顧客向けリポートで、今年は旺盛な支出が消費需要の急速な拡大をもたらしてきたが、「しだいに貯蓄やクレジットカード残高を取り崩して行われるようになってきているようだ」と述べ、消費動向の変化に注意を促している。
シャレットは、労働市場が来年、非常に力強く推移しない限り、堅調な個人消費は減退していき、リセッションの可能性がすでにかなり高まっている米経済にとって一段の重荷になる公算が大きいとの見方を示している。
米国では、新型コロナ対策の景気刺激策に後押しされて雇用は好調で、個人消費も今年7〜9月期に過去最高の水準を記録した。だが、インフレがなかなか沈静化しないため、市場関係者らはこうした状況がいつまで続くのか懸念を募らせている。
(forbes.com 原文)