まだ、「第8波」の流行まで時間があると思われていた11月6日、相模湾で海上自衛隊の創設70周年を記念した国際観艦式が行われた。もうすでに、海外からの入国制限も撤廃されていた時期だが、新型コロナの感染拡大防止を考え、一般の参加は見送られた。海上自衛隊関係者は「本当は、大勢の人を護衛艦にご案内したかったのですが、残念です」と語る。自衛隊は集団生活が基本だし、海自の場合、海に出たら逃げ場がない。慎重すぎるという指摘があるかもしれないが、もし観艦式が契機になって感染者が続出したら、責任を問われるのは海自自身だから、責められない。
それでも、観閲部隊4隻の中心、ヘリコプター搭載型護衛艦いずもには、外交官や駐在武官らを含む大勢の招待客が招かれた。海外の招待客らは、マスクをしたり、しなかったりだった。サッカー・ワールドカップの応援風景を見てもわかるように、海外ではノーマスク姿がほとんどだ。自国の基準に合わせればノーマスクだろうし、「郷にいれば教に従え」と考えた人もいたのだろう。海自幹部らはマスク姿だったが、招待客を出迎えるたびに、律儀にマスクを外していた。マスクを外した方が礼儀作法にかなうということなのだろうが、「人に会うときにノーマスク」は珍妙な光景だった。乗艦した岸田文雄首相や浜田靖一防衛相も、艦内で栄誉礼を受けるときは、マスクを外していた。
観艦式は無事終わったが、その後に会った自衛隊OBの何人かが、やや不満を帯びた口調で尋ねてきた。「なんで、総理は平服(スーツ)だったんだ」。確かに、岸田首相も浜田防衛相も当日、普通の背広姿だった。OBの1人は「駐在武官のなかにはモール(飾緒)をつけて礼装姿だった人もいたそうじゃないか。海外の祝賀艦艇から敬礼を受ける総理が平服姿だったなんて」と愚痴をこぼした。なかには、「やっぱり、岸田さんは安倍さんと違って、自衛隊に理解がない」という人もいた。別のOBは「(社会党の)村山(富市)さんだって、民主党の菅(直人)さんだって、モーニングにシルクハット姿で観閲式に出席した」と文句を言った。