世間の人々は、たとえそれが公共の利益のためであっても、何をすべきか指図されることを嫌う、とスピッカーマンは述べる。H&Mは2015年以降、サステナブルコレクションを毎年展開しており、SHEINは、メンバーが大切に着用してきた中古アパレル製品の特別セールをしばしば実施している。
しかし、名ばかりのサステナブルコレクションは、ファッション業界が引き起こす途方もない規模の環境破壊の前には焼け石に水だ、と専門家は指摘する。商品在庫の90%は、発展途上国の老朽化した危険な工場で、労働者を酷使し、汚染を垂れ流し、地球規模の気候危機を加速させながら製造されたものだからだ。
ここ数年、ファストファッションは批判の矢面に立たされてきた。垂直統合の内情や、衣類製造が地球温暖化を深刻化させる現実を、環境活動家などが暴露した結果だ。
小売業者が、グローバルな問題を解決したり、下請け業者や工場を監視したりすることを望んでいるわけではない。だが、セレブリティやインフルエンサーがファストファッションの環境負荷を糾弾するようになった結果、消費者や小売業者も、こうした声に反応し始めている。
ただし現実には、公正を求める声よりも、金がものを言う。ファッション業界が、貧しく教育水準の低い労働者を酷使しつつ膨大な利益をあげる状況を、一挙に解決してくれる魔法の薬は存在しないのが現状だ。
(forbes.com 原文)