キャリア・教育

2022.12.13 08:30

NHK朝ドラのロケを誘致 「120%黒子に徹した」登米市職員

宮城県登米市役所 観光シティプロモーション課の小野寺崇

地方自治体には、そのまちの魅力を伝えるシティプロモーションを担当する部署がある。一見すると華やかに見える部署だが、老朽化が進む観光施設の修繕対応などで1日が終わることもある。「派手で楽な仕事」と同僚から軽口を叩かれることもあるこの仕事だが、「120%黒子に徹する」という信念を貫き通し、成果をあげている職員がいる。

宮城県登米(とめ)市役所の小野寺崇(おのでら・しゅう)は、NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」(2021年放送)のロケ地として、登米市が選ばれることに貢献した。

ドラマのロケ地となったことで、登米市はメディアに60回以上も登場、加えて第12回ロケーションジャパン大賞で準グランプリも受賞。ロケ地巡りなど、地元の観光需要の創出に繋がった。


「おかえりモネ」の舞台を案内する「とよまエリアまちあるきマップ」

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」は、「NHK東日本大震災プロジェクト」という被災者・被災地支援のためのキャンペーンプロジェクトの一環でもあった。全120回の期間平均総合視聴率は21.8%(ビデオリサーチ調べ)、登米市内の事業者は番組ロゴの商用利用が可能となるなど、地域経済から市民の心理的な面も含めて、計り知れない効果を地域に与えることとなった。

丁寧なやり取りでロケ地を引き寄せる


登米市がNHKと初めて接点を持ったのは、市への取材依頼だった。「震災のドラマの取材をしている」とだけ言われて、この時点では連続テレビ小説の件は伏せられていた。

観光課の担当者は休日であったため、すぐに対応ができなかった。しかし、大きな案件になりそうだと直感した当時企画政策課でシティプロモーション担当だった小野寺が、代理で対応を買って出た。以降も小野寺は、取材が夜間や休日に及ぶこともあったが、NHKへの対応を懇切丁寧に続けていった。

その甲斐あって、複数の候補地との競争を経て、登米市が「おかえりモネ」のロケ地に決定した。いわゆる「朝ドラ」のためのロケ地取材と知った時には驚いて声をあげたが、そこからが小野寺の仕事の本番だった。

まず、ドラマに関するすべての窓口を小野寺に一括するように先方から依頼された。その結果、小野寺は100人以上の制作スタッフとやりとりし、打ち合わせを重ねることとなる。
次ページ > 約30日間のロケにも帯同

文=加藤 年紀

タグ:

連載

地域と観光が面白くなる新局面

ForbesBrandVoice

人気記事