「一度きりの買い物」に成功するには
実は、冒頭で紹介した「買い物をするときに意識するポイント」のランキングでは、「サステナビリティ」は30%で、9番目でした。この結果は、消費者がサステナビリティに関心がないのではなく、「サステナビリティ」という言葉の抽象度が高く、具体的なアクションにつながりにくい側面を反映したものと筆者はみています。
一方で、世界をリードする企業や消費者の「耐久性」への関心は高まっているため、メーカーがその耐久性を客観的に評価できるような技術や透明性を提供することで「サステナブルな企業の一社」と認識されるようになることも戦略の一案でしょう。
先の調査では、世界で毎年1630億米ドル(およそ23兆円)相当の在庫が廃棄されていることも明らかになりました。企業、または消費者という立場を超えて、一人ひとりが廃棄物を削減するアクションを取らなければならないのは疑いのないところです。
色あせて多少くたびれたとしても、流行とは言えなかったとしても、何年も経って自分の体によく馴染むようになったTシャツはかけがえのないものです。そして、そのTシャツには「愛着」という新品にはない新しい価値が加わっていることに気づいたときに、消費者は「一度きりの買い物」に成功したと言えるのではないでしょうか。
加藤順也◎Avery Dennison Smartrac Japan マネージングディレクター。LVMHグループ、Kurt Salmon US を経て2011年にAvery Dennisonに入社、2019年4月から現職。小売業や消費財メーカーへのコンサルティングやソリューション開発が専門。Avery Dennisonにおいて、マーケット開拓やRFID導入プロジェクトをリードし、日本支社の成長を牽引。上智大学卒。UCバークレーHaasビジネススクール DLAP修了。