生命が存在したかもしれない土星の衛星「タイタン」の画像公開

ケック望遠鏡が撮影した2022年11月7日のタイタンの画像。北半球の11時と1時の位置に明るい点が見える。クレジット:NASA/STSCI/KECK OBSERVATORY/JUDY SCHMIDT


これらの新たな画像と発見が公開されたのは、ハーバード大学の宇宙物理学者アブラハム・ロエブがタイタンが生命の前駆物質を生成した可能性があるという考察を発表した直後だった。「タイタンで生命が見つかれば、それは地球の生命が唯一ではないことが明らかになるだけでなく、比較的遅く登場した可能性もあることになります。最初の星々が形成された後、宇宙は生命で満ち溢れていた【略】そのような発見は、宇宙に生命はいないと1世紀以上述べてきた多くの宇宙論学者をがっかりさせることでしょう」と彼は述べている。


ウェッブのNIRCam(左)とケックのNIRC-2(右)で見る2022年11月4日から6日にかけての30時間のタイタンの雲の変化(NASA, ESA, CSA, W. M. KECK OBSERVATORY, A. PAGAN [STSCI]. SCIENCE: WEBB TITAN GTO TEAM.)

タイタンは、宇宙の生命の起源の手がかりを握っている場所だと長年考えられてきた。それはタイタンのさまざまな場所に有機物質が蓄積されていて、そこにアミノ酸などの「生物学的に興味深い」化合物が保持されている可能性を示唆しているからだ。地球ではアミノ酸はすべての生物の構成要素だ。

生命が存在するという「宇宙の秘密」が初めて明らかにされるのはタイタンではないだろうか。

遠からず明らかになるだろう。NASAの野心的なドラゴンフライミッションが2025年にスタートし、2034年にタイタンに到達して2年間タイタンの前生物化学を調べる。着陸機のクワッドコプタードローンは16日ごとに位置を変えることができる。

ただしそれはロボットがタイタンに着地する初めての例ではない。

2005年、小型探査機ホイヘンスが、NASAの土星探査衛星カッシーニからタイタンに向けて送り出された。2時30分間の降下を経てタイタンに着陸すると、そこは丸い氷の塊に囲まれていた。ホイヘンスは地球を思わせるような古代の乾いた海岸線と長いメタンの川を発見した。



11月最初の週、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とケック天文台は、土星最大の月を近赤外撮影し、北半球のタイタン最大のメタン海であるクラーケン海近くに雲があることを発見した(NASA/STSCI/W. M. KECK OBSERVATORY/JUDY SCHMIDT)

「これは2017年のカッシーニ・ホイヘンス・ミッション完了以降に見た最も興味をそそられるデータであり、NASAのドラゴンフライが2032年タイタンに到着する前では最高の部類に入るでしょう」とドラゴンフライミッションの主任研究員で、ジョンズ・ホプキンス大学のジビ・タートルはいう。「この分析は、私たちがタイタンの大気と気象について学ぶ上で非常に役立つでしょう」

9月前半、同じ科学者グループが、タイタンが遠方の恒星を隠す星食を観測した。この稀少なイベントの最中にケック望遠鏡とチリの超大型望遠鏡VLTを使うことによって、彼らはタイタンの大気が星の光に照らされるところを見ることができた。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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