キャリア・教育

2022.12.08 09:30

自分が活躍してる姿を見せ、「あなたもできるよ」とエールを送りたい

モデル、ゆめさぽ代表理事の田中れいか

「児童養護施設出身のモデルとして頑張ろうとしていたときに、『施設出身だと言うべきではない』と言われたことがあるんです。モヤモヤしました。悪い事をしたわけでもないのに『黒歴史』みたいに隠さないといけないの? って」。

昨年12月に『児童養護施設という私のおうち』を上梓した田中れいか。モデル業のほか、ふたつの一般社団法人の代表理事や講演、メディア発信をこなす彼女は、7歳から18歳まで児童養護施設で過ごした。施設出身をオープンにして活動するのには、強い意思が込められている。

「社会的養護についてもっと知ってもらいたい。古いネガティブなイメージをもっている人が多いけど、アップデートしてほしい。いま自分の家にいるのがきついと思っている子が『施設に入れるかも』と思ってもらえるような、安心できる情報も必要です。それで助けられる人がいるはず」

表紙ははじけるような笑顔。帯に「かわいそうはもう古い!」と書かれた著書には自身の体験と社会的養護の現状などを詰め込んだ。旅行や職員との手紙交換など、楽しい思い出もリアルに、ポジティブなメッセージを心がけた。

昨年から「ナカソラ」というプラットフォームづくりに取り組んでいる。各児童養護施設にAmazonの欲しい物リストをつくってもらい、寄付のミスマッチをなくす試みだ。全国で約600ある児童養護施設には、児童福祉法で定められた1人当たりの予算があり、お小遣いや被服費、本やランドセルの購入費用もある。「かわいそう」というイメージで古い絵本や名前入りの古着を寄付する人がいるが、ミスマッチは施設の職員に仕分け作業など余計な負担をかける。

「施設出身のスピーカーとして、悲惨な体験が求められることに違和感があった。話すのがつらい時期もあったけど、自分を知る努力をして道が開けてきた。施設にいる子に限らず、やりたいことを失っている若者は多い。自分自身がなりたい自分になっている姿を見せることで『あなたもできるよ』って、エールを送りたい」

田中れいか◎1995年、東京都生まれ。駒沢女子短期大学卒業。2020年に社会的養護の専門情報を発信する「たすけあい」を創設。一般社団法人ゆめさぽ代表理事。ミスユニバース2018茨城県大会準グランプリ、特別賞。

文=成相通子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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