フランスの短距離便禁止令、欧州委も承認 パリ発着3路線廃止へ

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短距離の航空路線は欧州、少なくともフランスでは終わりが近づいているようだ。欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、炭素排出量の削減に向けてパリ・オルリ空港とナント、リヨン、ボルドーを結ぶ各路線の運航を禁止するフランスの措置を承認した。3年後に成功したと判断されれば、さらに多くの短距離路線が廃止される見通しだ。

フランスの議会ではこれら3路線の廃止を盛り込んだ環境法案が2021年に提出された(編集注:法案は同年中に上下両院で可決され、今年4月に施行)が、フランス空港連合と国際空港評議会(ACI)の欧州支部が異議を唱え、欧州委員会が調査していた。

フランスは環境法のもとで、列車で2時間半内に移動可能な区間の航空路線を廃止する方針。EUは域内で効率的な交通インフラを構築する「欧州横断輸送ネットワーク(TEN-T)」政策の一環で新たな高速鉄道路線を整備しており、これによって域内の多くの短距離航空路線は不要になると政策立案者や政治家は考えている。

たとえば、イタリアのミラノからパリまで列車で移動しようとする場合、現在は7時間あまりかかるが、フランス・サヴォワ県のアルプス地方で建設中の「モンスニ基底トンネル」(全長約58キロメートル)が開通すれば、所要時間は半分に短縮される。

EUの統計によると、欧州で利用者の多い上位20航空路線のうち、17路線は約700キロメートル以内の距離となっている。これくらいまでの距離なら、都市間を結ぶ高速鉄道のほうがより速く、クリーンで持続可能な移動を提供できる。

フランスのクレモン・ボーヌ運輸相は欧州委員会による承認を受けて声明を出し、「これは大きな前進であり、フランスがこの分野の先駆者であることを誇りに思う」と述べている。

短距離フライトのほぼ全面的な禁止はもともと、炭素排出量の削減案について政府などに提言するフランスの「気候市民会議」が提案していた。

環境活動家らは欧州委員会の決定を歓迎しつつも、これは最初のステップにすぎず、環境を害する短距離フライトから旅客を引き離すにはさらに踏み込んだ措置が必要だとしている。

フランスの3路線禁止措置の施行には数カ月かかる見通しだ。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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