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2022.12.29

人は数日前の天気予報に基づく「思い込み」の罠にはまってしまうもの

Getty Images

ここジョージア州では、米国時間12月6日に上院の大事な決選投票がある。この1週間は、定期的に12月6日の天気予報をチェックしていた。気象予報士である私は、予報が変わって行くことを知っているがが、多くの人は「アンカリング」の間違いにはまっている。アンカリングとは何か、その間違いにはまっているとはどのようなことなのか?

アンカリングの正式名称は、アンカリングバイアス(anchoring bias)だ。アンカリングバイアスにはいくつかの説明方法がある。たとえばDecision Lab(デシジョンラボ)のウェブサイトでは「あるトピックについて最初に与えられた情報に過度に依存してしまう認知バイアス」と説明されている。これは、私が日頃から天気予報の中で観察していることだ。最近で言えばハリケーン「イアン」の時もそうだったし、ここ南部でも雪の予報の際によく目にしている。

気象システムは変化していくものであるにもかかわらず、人々は5〜7日先の予報を見て、まさにそのシナリオに「アンカー(錨[イカリ])」を打つのだ。Decision Labのウェブサイトにはさらに「私たちは、何かを計画したり見積もったりするとき、新しい情報を客観的に見るのではなく、自分のアンカーという基準点から解釈してしまう」と書かれている。そのやり方では、往々にして間違った判断や解釈が行われてしまうことがある。たとえば、ハリケーン「イアン」(2022年)はタンパベイ地域に影響を与える可能性が高いと多くの人が思い込んでいたが、上陸の数日前にアップデートされた予報ではリー郡地域が予測進路の円内に入り、高潮警報が出されている状態だった。

Simplypsychology.orgでは、アンカリングバイアスのことを「意思決定や問題解決の際に、1つの情報に集中することで生じる誤ったヒューリスティック」と説明している。そして、誤った最終見積もりや判断は、初期値や初期情報に左右されることが多いことを、このサイトは説明している。気象プロセスには常に不確実性がつきまとう。このため、正確な場所での具体的な情報ではなく「降水確率のパーセント」や「ハリケーンの予想進路円」が活用されているのだ。

これからは、これらの次のようなベストプラクティスを取り入れてみて欲しい。

・数日~1週間後に予定がある場合は、変化する天気予報に注意しよう。予定日の1週間前に見たものをもとに、計画を「アンカー」(固定)しない

・急速に進行する悪天候の脅威に直面しているなら、就寝前や外出前に状況を確認しよう。当日の早い時間に見た予報で「アンカリング」しない

・寝る前に必ず天候に合わせた「夜間対策」をしておく

・早いタイミングで見た予報が自分の期待と一致しているからといって「ウィッシュキャスト(希望的予測)」をしてはいけない


forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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