タイタンを掘り下げて研究することが困難だったのは、雲や煙霧の厚い大気があるためだが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、この雲の詳細を初めて科学者たちに提供し、その延長でこの独特の世界で起きている気候パターンの情報をもたらした。
「ウェッブの赤外線映像を使ってタイタンの大気を研究することは何年も待ってきました」とJWSTの主任研究員コナー・ニクソンはいう。「雲の検知が楽しみなのは、表面が太陽に温められる夏の終わりに北半球中部で雲が発生するというタイタンの気候に関する長年のコンピュータモデル予測を検証できるからです」
JWSTの最先端機器によって、天文学者は雲の高度もより高い信頼度で決定することができる。
ハワイ、マウナケア山頂にあるケック天文台の望遠鏡による観測によっても、科学者たちが実際に見ているものは雲であり、微妙に変化していることを確認することができた。
「私たちは、タイタンを1日か2日後にケックの望遠鏡で見たとき、雲がなくなっていることを心配しましたが、うれしいことに雲は同じ位置にあり、形が変わっているように見えました」とカリフォルニア大学バークレー校の天文学者イムケ・ド・ペーターはいう。
JWSTおよびケック望遠鏡のNIRCam画像から合成したタイタン(NASA/STSCI/W. M. KECK OBSERVATORY/JUDY SCHMIDT)
このデータは、フランス、パリ・シテ大学の大学院生で、タイタンの研究を長年コンピュータモデルに頼らざるを得なかったマエル・エスセーヤをはじめ多くの研究者を喜ばせた。
「何年もシミュレーションを続けてきたため、ついに本物のデータを得られたことにとても興奮しています。来年のパート2に何がやってくるのか待ち遠しくてしかたありません」
ウェッブやその他の望遠鏡によるタイタンの観測は、NASAが計画しているタイタンへのドラゴンフライミッションへの情報提供にも役立つ。ドラゴンフライではヘリコプターのような着陸機を使って、生命の兆候を探すためにさらに探査を行う。現時点で同ミッションは2027年の打ち上げを予定している。
(forbes.com 原文)