経済ナショナリズム興隆で、世界経済は2ブロック体制に向かうか

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世界貿易は今後、かつてない様相を呈することになるだろう。

その原因は経済ナショナリズムの台頭であると、先日発表された報告書は指摘している。

「中国と西側諸国の対立が、経済ナショナリズムを煽っている」と書いているのは、ロンドンに本社を置くコンサルティング会社、キャピタル・エコノミクスの報告書だ。これにより、おおむね1945年から現在まで存続してきた世界貿易システムは、いまや「断裂」し、2つの主要貿易ブロックに置き換わりつつあると、報告書の著者らは見ている。

この予測が現実のものとなれば、第二次世界大戦以降に我々が享受してきた経済的豊かさは、深刻な打撃を受けるだろう。1945年の枢軸国敗戦以来、世界貿易の規模は、一貫して拡大してきた。直近の急成長が起こったのは、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年12月のことだ。

長年にわたり、ほとんどの自由市場経済学者は、世界の経済生産をより効率よく増加させる自由貿易は良いものであるという考えを支持してきた。自由貿易とは、外国からの輸入品に、関税や割当量、非関税障壁を設けないことを意味する。

我々は、21世紀最初の10年間で、おおむねこの段階に到達した。2017年の平均関税率は2.6%であり、1994年の8.6%から大幅に低下している。世界銀行のデータによれば、関税率の低下により、2008年の世界貿易額は、世界のGDPの約60%を占めるピークに到達した。以後は、これをわずかに下回る水準で推移してきたが、2018年に急落し始めた。

そして今、私たちは新たな局面に入った。少なくとも、キャピタル・エコノミクスの報告書ではそう述べられている。

同社によれば、パンデミックと、ロシアのウクライナ侵攻がこの問題を悪化させた。各国は、世界経済の混迷によって国内産業が深刻な打撃を受けることを恐れ、保護主義、すなわち貿易障壁を設ける方向に傾いている。

結果として、2つの主要貿易ブロックが形成されるだろう。第一のより大きなブロックは、米国とその同盟国や友好国。第二のブロックは、中国とその同盟国や友好国だ。

こうした変化は、経済成長を減速させ、インフレを加速させる、と報告書は指摘する。2つの地域のあいだでは、特定技能をもつ労働者の移動が減少し、結果的にイノベーションや経済発展が阻害されるだろう。

「地政学的配慮は、リソースの配分以上に、意思決定に影響を及ぼすようになるだろう」と、報告書は述べる。言い換えれば、むきだしの資本主義は衰退し、国家による市場への干渉が台頭するのだ。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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