ビジネス

2022.12.08

視点が変われば企業も変わる。女性社外取締役の目指すもの

折井雅子 サントリーホール総支配人、大林組社外取締役、東宝社外取締役

2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂で取締役の多様性確保が急務となり、女性の社外取締役の数は5年前の3倍と急増中だ。サントリーホール総支配人・折井雅子もそのひとり。大林組と東宝の社外取締役として異業種出身かつ女性という個性を生かし、各企業に新しい風を吹き込んでいる。

折井は男女雇用機会均等法施行前の1983年にサントリーに入社。「ガラスの天井」どころか「同期の男性が全員昇格するまで、女性は昇格できない」といわれるほど男女差があった時代に、折井は所謂お茶くみから始め、周囲の信頼を得ながら酒類製品開発や清涼飲料水「なっちゃん」のブランド育成を手がけた。折井いわく「鉄格子の天井」を地道に崩し、2012年には生え抜き社員初の女性執行役員に就任した。

20年、大林組の社外取締役に。社外取締役として意識しているのは「異なる視点でものを見ること」。サントリーでサービス提供側、受け取る側など、さまざまな視点を経験したことが生きている。大林組でも、多様な立場からの期待や社会が何を考えているかという視点で臨んでいる。

「異なる視点で見ることで変化やリスク、チャンスに気づける」。変化に対応するため、少数派の価値観を吸い上げられる環境も大切だと折井は話す。

サントリーで自ら立ち上げた女性マネジャーの集まりでは、ディスカッションの場に男性役員を1人招きマイノリティの立場を体験してもらったこともある。少数派の声の上げにくさを男性が気づくきっかけになればとの思いからだ。

社外取締役を務める際大切だと考えるのは「企業の理念に共感すること」。サントリーホールはコロナ禍の20年11月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を成功させている。「安全に公演を開催しいい音楽を届けたい」という情熱は、東宝の舞台にかける精神に重なる。折井にとって、観劇や日本舞踊等の趣味の中で喜怒哀楽を感じるのも大切な時間だ。「仕事を離れ思い切り心を動かす瞬間があるから、バランスが取れるんです」


おりい・まさこ◎1960年生まれ。東京大学卒業後、サントリー入社。2000年にはマーケターとして初の女性課長に。お客様コミュニケーション部長を経て、12年にサントリーホールディングス執行役員に就任。16年にサントリーウエルネス専務取締役、19年よりサントリーホール総支配人。20年より大林組、21年より東宝の社外取締役を兼務。

文=菊池友美 写真=林 孝典

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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