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2022.12.07 12:00

全米で急成長カフェの「Kindness」経営が注目される理由


さらに、Dr.Oliver Scott Curry氏の言葉で印象的だったのは、人々の健康にも良い影響を及ぼす点に触れていたことだ。

「「Kindness(優しさ)」は、ストレスや心配事が軽減され免疫力もアップするなど健康においても大変良い影響を及ぼすと言われている。私はウェルビーイングやマインドフルネスより価値があるものだと思います。自分だけでなく受け手にもベネフィットをもたらすからです」

こうした専門家の視点を紐解くと、パンデミック以降の混迷する時代にメンタルヘルスなどの問題が叫ばれる中、「Kindness(優しさ)」がもたらすポジティブな連鎖は、生活者が今最も必要としているベネフィットのひとつなのではないかと考えられる。

だとしたら、ブランドや企業は、こうした生活者のインサイトを捉え、「Kindness(優しさ)」をマーケティングに組み込み、社会課題の解決に向けた戦略をとることで結果的に生活者の共感を得られるのではないだろうか。

ご近所SNS x 通信会社大手が起こした、ソーシャルインパクト


「kindness.org」によると、「Kindness(優しさ)」は、マーケティングにおいて、生活者をアクティブにする働きがあり、企業やブランドのゴール達成に貢献し変革のきっかけをもたらしてくれるという。

こうした「kindness.org」の知見をベースに全米に「Kindness(優しさ)」のムーブメントを起こしたのが、通信会社大手のVerizonだ。

同社は、パンデミック以降、世の中を明るくするムーブメントを起こそうと、多数の企業とパートナーシップを組み、親切なアクションを広げる「#ACallForKindness」キャンペーンを始めた。

地域のアーティストとコラボして「Kindness(優しさ)」を表現したアートを展開したり、思いやりのある行動をSNSでハッシュタグを通して拡散するなど、その活動は多くの人の共感を得たという。



さらに、米国で急成長しているご近所SNS「Nextdoor」と組み、今年の「Neighbor Month(ご近所月間)」に、全米で大規模なミートアップを開催。近隣に住む人々が集まり、地域のコミュニティにおける親切な行動について共有し合った。

食料品やおむつなどの寄付をはじめ、シンプルに褒め言葉を交わすなど、それぞれが考える「Kindness(優しさ)」をシェアすることでお互いをインスパイアし、大きなソーシャルインパクトをもたらしたそうだ。

世の中をより良くするアクションに期待感


このような米国のブランディングやマーケティング施策を見ていると、生活者が企業やブランドに対して世の中をより良い場所に変えていく姿勢やアクションを期待していることがわかる。

特にパンデミック以降、社会分断やヘイトといった問題が多発し、メンタルヘルスの課題が注目され、ウェルビーイングをはじめ心身の健康志向が高まる時代背景において、心を豊かにするアイディアは、人々の共感をよびコミュニティが生まれやすいと言える。

「Kindness(優しさ)」というと、人によって見方が変わり、捉えどころのないものとして解釈される場合もあるかもしれないが、徹底的なブランディングをベースにストーリーを紡ぎ、科学的な切り口から施策を企画することで、成功するマーケティングになると考えられる。

一人ひとりが心豊かになり、未来に続くサスティナブルなより良い社会をつくっていくためにも、企業やブランドは、このような米国の「Kindness(優しさ)」マーケティングから多くの示唆が得られるのではないだろうか。

文=田辺敦子

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