特に、キャンセルカルチャーやポリティカルコンシューマーが存在感を増すアメリカでは、ブランドが世の中に及ぼすソーシャルインパクトについて注目する生活者も多くなっているようだ。
このような時代に、米国の広告・マーケティング業界で注目され始めているキーワードが「Kindness(優しさ)」だ。今回は、全米で急成長するオーガニックカフェのブランディングと先日開催されたマーケティングイベント「Advertising Week」で紹介された最新事例から、ブランドが「Kindness(優しさ)」をどのようにマーケティングに取り入れ社会的価値を高めながらサステナブルな成長戦略を描いているのか紹介したい。
アメリカのカフェで遭遇した「Kindness」マーケティング
ロサンゼルス・サンタモニカのおしゃれなストリートとして知られるモンタナ・アベニューでひときわ賑わっているカフェがある。昨年オープンした「La La Land Kind Cafe」だ。
「Kindness(優しさ)」を冠したお店だけに、店内に足を踏み入れただけで、単なるカフェではないその温かい空気に気づく。
白とグレーを基調としたインテリアに、黄色いペーパーカップが目を引くカウンター。筆者が訪れた時は、テラス席やテーブルにはローカルのお客さんを中心に、ファミリーから友達同士、カップル、仕事するビジネスパーソンなど様々な人がくつろいでいた。
お客さんだけでなく、店員も楽しそうに働いている。笑顔で渡してくれた黄色いカップには、店名のロゴと「NORMALIZE KINDNESS(優しさを正常化する)」というメッセージが書いてあった。
この強いメッセージに時代が求めているベネフィットを感じ調べてみると、このカフェが「Kindness(優しさ)」をテーマに、フォスターチャイルド(里子の意味)を積極的に雇用し、コミュニティや人を大切にしながら社会課題を解決するビジネスモデルを形成していることがわかった。
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フォスターチャイルドに雇用機会を
オーナーであるFrancois Reihani氏は、若干25歳のアントレプレナーだ。これまでに、ダラスで飲食店の共同経営やブランディングを手がけていた彼は、ホームレスの50%以上が里親に預けられた経験があることを知り、自身の起業家精神と課題解決に対するホスピタリティの情熱を融合し、フォスターチャイルドに雇用の機会を提供する「La La Land Kind Cafe」を立ち上げたという。
「私たちは大きな夢を抱いています。より良い世界を創造するために、社会的企業は私たちの未来をリードするべきです」
プロフィールのメッセージでこう記しているFrancois Reihani氏は、社会的企業のミッションを掲げながらも、顧客からカフェが単なる慈善団体と捉えられ働く人に対する一定のイメージを抱かせないように、ブランディングに力を注いだという。
スターバックスを凌駕するほどのヒップな店内は、ブランドカラーのイエローをメインに、間接照明がほどこされた壁面にグッズが並べられ、インテリアショップのように配色が意識されている。スタイリッシュな雰囲気の中に明るい気持ちになれるハッピーなオーラが感じられ、細部にまでブランディングを施しているのがわかる。