ビジネス

2022.12.08

顧客志向の理想と現実 半数は「顧客のためにやりたいことができない」

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「顧客志向」に「お客様第一主義」……

ビジネスにおいてこれほど普遍性があり、奥深く、実現が難しい内容を指す言葉はあるだろうか。

顧客と向き合う視点に長短はあれど、ビジネスパーソンは企業が掲げる経営理念や目標に沿って、何かしらの顧客課題を解決することに日々、尽力する、それがあるべき姿だ。しかし、現実はやはり少し違っているらしい。

CRMプラットフォームを運営するHubSpot Japanは、経営者やマネジメント層、一般社員で構成されたビジネスパーソン計1372名を対象に、「顧客との関わり方に関する理想と現実」についての意識調査を実施。

「顧客の成功を支援することが、結果として自社の成功にもつながっていくと考えるか」の質問には、「そう思う」が23%、「どちらかと言えばそう思う」が52.5%。合わせて約8割が顧客の成功と自社の成長を紐づけて考えているという結果に。

一方で、「本音では仕事相手(顧客、同僚)のためになる行動をしたいと思っているものの、そうできなかった経験があるか」の質問には、「そう思う」が9.1%、「どちらかと言えばそう思う」が39.2%で、約半数のビジネスパーソンが顧客志向に反する行動をした経験があると回答した。

具体的には、「顧客の利益になる商品を提案しようとしたが、 上司からは会社の利益にならないという理由で却下された」「納期を優先して、顧客の求めるクオリティに達成していない時点で出荷した」「利益率の良いプロダクトを選んでもらえるような提案をしてしまっている」「売り上げ目標達成のために、売れない在庫を押し込んだ」などというエピソードが並んだ。

さらに、「仕事で自分の本音に従えない」理由として最も多かったのは、「人間関係を悪くしないため」で27.9%。次に「会社の指示に従わなければ解雇や昇進の遅れなどのリスクがあると思うから」(19.8%)、「本音に従っていると業務上の目標を達成できないから」(19.2%)の回答が続いた。

ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正はかつて、「ユニクロでいちばん発言力のある人、それは社長ではなく、お客様」という名言を残した。経営層から現場まで、本当の意味での顧客志向を実現できている企業は、現代に一体何社存在するだろうか。

文 = 大柏真佑実

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