「健康」や「幸福」、あるいは、「身体的、精神的、社会的に満たされた状態」などとされるウェルビーングだが、企画にあたって、大宮はこの言葉について一生懸命考えたという。
「ウェルビーイング、よく生きるって、そもそもなんなんだろうと。そして、それは限られた時間を精一杯生きることなんじゃないか、と仮定したんです」
そのうえで、会場には“限られた時間”の中で描かれた絵を展示することにした。青森や北海道、宮城、鹿児島、福井など、依頼があれば各地に赴き、その土地土地の人たちの前で、その場のエネルギーを感じながら描いた大きな作品が並んだ。
やりたいこととやるべきことの両輪
“ことば”の展示は、次のメッセージから始まる。
ようこそ、ウェルビーイング美術館へ
ここは、よく生きることについて
考えるための美術館です。
頭で考えるのではなく、
絵をぼんやり見ながらぼんやり
思いを巡らせてもらえたら。
そんなきっかけになったら。
その先に続くのは、大宮が「よく生きる」ことへ巡らせた思考だ。人生とは、自分らしくとは、幸せとは、人として与えられた役割とは……。
「例えば、私は自然が大好きだから、ひっそりと森の中で暮らしたいという願望があります。自分らしい生き方であると思う。でも、それができれば幸せかというと、心がワサワサするんです。落ち着かない。
というのは、おそらく人間にはそれぞれ与えられた役割や使命みたいなものがあって、やりたいことと、内なる声というか使命を果たすこと、その両輪がそろってはじめてウェルビーイングなのではないかと思うんです。ウェルビーイングはゆるくなくて、苦しかったりもするんじゃないかと。でも、ここに書いたのは私の考えで、答えではない。この美術館が、立ち止まって“よく生きる”を考えるきっかけになれば嬉しい」