「よく生きる」を考える 大宮エリーが手掛けたウェルビーイング美術館

「ウェルビーイング美術館」で開催されたライブペインティング


期間中には、「すごくエネルギーを使うからここ数年は封印していた」というライブペインティングも開催。1回目は平日夜に、ハープとギターのユニット「tico moon」と。2回目は祝日昼に、シンガーソングライターの優河と共演した。


9月21日に開催されたライブペインティング。tico moonの二人は過去にも大宮と共演している(写真=作家提供)

ライブペインティングで大宮は、何を描くか決めずに始めるのだという。今回で言えば“ウェルビーイング”のような与えられたテーマを頭におきながら、六本木という土地と演奏される音楽、そこにその時間集まった人たちのエネルギーを感じながら、動き出していく。

「みんなの前で作品を描く、ゼロからイチをつくるって、楽しいっていうよりも、怖くて辛いこと。でも、意味がある。やりがいがある。楽しかったなと思う。それがウェルビーイングかなぁと。描いていると会場の“バイブス”を感じて、不思議とそれが絵に反映されるんです。みんなの心にある色や線やテーマが反映されていく。感じるんです。みんなと描く作品なので、もしうまくできなかったら連帯責任です(笑)」



静かに線を走らせたり、リズミカルにキャンバスを叩いたり、画材のローラーを操って色を一変させたり。はたまた、絵の具を直接手に取ってなすりつけたり、水を直接キャンバスにかけたり、ダイナミックに描いていく。

途中、いずれの回でも、観覧していた女子高校生や小さな子供に声をかけ、クレヨンで絵の一部を合作していた。

アートも人の痛みを癒す


作家や画家として名の知れている大宮だが、実は東京大学の薬学部出身。

「私は美術教育を受けていないんです。東大に入ったのは、植物の研究をしたかったから。薬学部も漢方に進みたかったけど向いてなかった。でもアートで人の心を癒すことができたら。手段が違えど、同じ道ですよね」と、根底にある思いを明かす。


9月23日に行われたライブペインティング。大宮と優河の共演は今回が初めてだった(写真=作家提供)

そして、今やそれを、表現を通じて実現している。2022年春には、鳥取大学医学部附属病院に依頼され、玄関の壁に幅5mを超える作品を制作した。

「たくさんの患者さんや看護師さんが『いつできるの?』と楽しみにしてくれて。完成後には、『(絵を見て)痛みを忘れました』と言われて、嬉しかったんです。そういう仕事をしていきたいなと。ミッドタウンには、入院するような痛みのある人はいないかもしれないけれど、何か違う痛みがあるかもしれない。そのためにアートと音楽でできることがあると思う」


9月23日に行われたライブペインティング。来場者の多くが座って最後まで鑑賞していた(写真=作家提供)
次ページ > カラフルなポストイットの意味

編集=鈴木奈央 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事