「副業解禁、企業に促す」。6月25日の日経新聞1面の見出しだ。サブタイトルは「厚労省制限なら理由開示」。ずっと規制してきて、いきなりの超手のひら返しだが、ハッピーになる人も多いからよいことだ。そして解禁となるとセットで語られるのが「本業への還元」。実際その日の日経にも、5面にこの記事があった。
この本業と副業のシナジーについては、ほかのさまざまな記事を見渡してもどうもハードルがある雰囲気で語られているように感じる。そんなことあるかな? やれば効果があるのに。ずっとA面(本業)とB面(個人的な活動)のシナジーに特化してきた電通Bチームだから、いろいろな場面でその考え方とやり方を話してきたが、まだまだ信じてもらえてない気がする。そこで今日はほかの組織からの最新事例をお話ししよう。
履歴書に「B面」を
2022年1月。電通Bチームに1通のメールが届いた。送り主は、2022年4月に札幌にオープン予定(現在開校済み)の田中学園立命館慶祥小学校。田中学園の「田中」とは誰か? 元北海道日本ハムファイターズでメジャーでもプレイした田中賢介氏である。こことBチームのつながり、それはこの学校が全国から先生を募集した際の履歴書にある。募集要項から引用させてもらう。
「2次試験に合格された場合には、任意ではございますが、『B面履歴書アクティビティー』にご参加いただきたく、お知らせ申し上げます。(中略)教職員の皆さんの好きやワクワクを活かすことが、学園・学校の前進につながると考えます。本当に好きなこと、得意なこと、夢中になっていることは何かを改めて考えていただき、ご自身の魅力を発信していただきます」「ご提出書式:A4サイズ1枚、形式:自由。」
電通Bチームの書籍から着想した、ともご丁寧に記載あり(感謝!)。先生のキャリア以外の個性について記載してもらう「B面の履歴書」について、田中学園のご担当者に詳しく伺った。
Q. なぜB面の履歴書をやろうと思ったんですか?
A.「ほかにはない教育」をする学校づくりをしていたので、ほかと違う採用をしたかったのです。普通の履歴書ではパーソナリティがあまり見えないため、そこを補おうと。自分を売り込むチャンスをあげたかったのと、応募者にユニークな学校であることを知ってほしかったこともあります。
Q. どんなB面履歴書が集まりましたか?
A. 多彩なB面が寄せられました。キャンパーで塾経営者。子どものころからカエルを飼育し続けているバイリンガル教師。世界を放浪する美術教師、などなど。B面履歴書の発案者も、片付けインスタグラマーの音楽教師だったりします。
Q. 反応は?
A.合否に関係なかったため、のびのび取り組めたようです。履歴書では見せられないセンスを出したいと張り切ったとも聞いています。
Q. 採用後もB面は活用されていますか?
A. はい。学校づくりで常に意識している3つ「only 1 /diversity / respect」に寄与しています。お互いにB面を知っていることで、どんな仕事でも、その人の得意な部分をいかせるポジションを任せようと意識できる。一人ひとりにスポットライトが当たり、特技をいかすことで、自分の仕事は楽しく、ほかの人の仕事には「あの人のこれがスゴイ」というリスペクトが生まれる好循環ができます。