米仏の公式晩餐会で出された「ロブスター」をめぐる論争

アメリカのバイデン大統領(左)とフランスのマクロン大統領(右)

バイデン大統領は12月1日、フランスのマクロン大統領を招いた公式晩餐会を開催したが、この夜の最も注目すべきドラマは、ディナーのメニューにメイン州産のロブスターが含まれていたことかもしれない。

今回の催しは、バイデン大統領の就任後初めての公式晩餐会で、メニューには受賞歴のあるオレゴンのチーズプレートや、エシャロットのマーマレードを添えたビーフ、米国産のオセトラキャビアが添えられたメイン州のロブスターなど、米国が誇る最高級の食材が用意された。

しかし、メイン州産のロブスターの存在は、一部の環境保護団体の怒りを買っている。環境保護コンサルティング会社のMRAGアメリカは先月、海中のロブスターのワナと浮遊ブイをつなぐ釣り糸がクジラに絡まり、絶滅の危機にあるタイセイヨウセミクジラの生存を脅かすという懸念から、メイン州産のロブスターのサステナビリティ認証を撤回すると発表した。

自然保護団体OceanaのディレクターのGib Broganは、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、ホワイトハウスが代表的なシーフード料理としてロブスターを選んだことは「ショックだ」と語った。また、2つの主要なシーフード団体がメイン州のロブスターはサステナブルではないと指摘し、大手食品スーパーのホールフーズも、販売を停止すると述べていた。

近年、連邦政府の規制当局は、ロブスター産業に対するより厳しい規則の制定を提案し、漁師らに釣り糸の使用本数を減らし、クジラが絡まったときにばらばらになるような弱い釣り糸を使うよう求めている。

一方、メイン州のロブスター漁業者協会とメイン州議会は、この規制が何千人ものロブスターの漁師の生活を脅かし、2021年に7億7500万ドル(約105億円)相当の漁獲量もたらした重要な産業に打撃を与えかねないとして、法廷で反撃している。

メイン州の政治家の中には、マクロンの訪問を機に、バイデン大統領にロブスター漁の規則案を撤回するよう求めた者もいる。民主党のジャレッド・ゴールデン議員は「ホワイトハウスが豪華なディナーのためにメイン州のロブスター200匹を購入するのであれば、大統領はロブスターの漁師と会う時間を取るべきだ」とツイートした。

「食文化を誇るフランスの大統領を招いた席で、メイン州のロブスターがふるまわれたことは、非常に誇らしい」と、メイン州のアンガス・キング上院議員はWSJの取材に述べている。彼は、メイン州産ロブスターのサステナビリティ認証の撤回に反対する代表的な人物の一人だ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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