世界各国の医師に燃え尽き症候群が蔓延、人材確保の危機のおそれ

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医療の世界でも「大退職時代」の嵐が吹き荒れるなか、看護師のあいだで燃え尽き症候群に陥る人の割合が高まっていることが、最近の研究で明らかになっている。だが、燃え尽きを訴えるのは看護師だけでなく、医師のあいだでもこの問題が広がっていることが、米国のコモンウェルス財団による新たな調査で判明した。

プライマリーケア担当医(primary care physician:PCP、一次医療医)を対象としたこの調査では、コロナ前の時期と比較して、提供可能な医療の質が「多少」あるいは「かなり」下がったとの回答も多かった。こうした調査結果は、世界の医療システムに深刻な問題を引き起こすおそれがあると、コモンウェルス財団は警告している。

ストレス、精神的苦痛、燃え尽きに悩む医師たち


コモンウェルス財団の調査は、先進国10カ国で医療に従事する9500人のPCPを対象としたものだ。調査では、回答した医師の半数以上(米国では全体の65%)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以降、仕事量が増えたと述べている。

仕事量の増加に直面したことで、調査対象となった10カ国のほぼすべてで、医師たちはかなり高いレベルのストレス、精神的苦痛、燃え尽きを報告している。こうした心の問題を感じる傾向は、特に55歳未満の医師のあいだで顕著だった。

オランダおよびスイスでは、全体的に見て、こうしたネガティブな感情を味わったと回答した医師の割合が最も低かった。一方、英国、ニュージーランド、カナダでは、その割合が10カ国の中でも高い方に位置している。

米国の医師では、過半数が、仕事のストレスレベルが「とても」あるいは「非常に」高いと回答した。特に、比較的若い医師は、年長者と比べてストレスを訴える割合が高く、55歳未満の医師では63%が、仕事のストレスレベルが高いと回答している。これに対して、55歳以上ではその割合は54%だった。

英国では、ストレスレベルが「非常に」あるいは「とても」高いと回答した医師の割合は、55歳未満では全体の4分の3に達した。フランスは、比較的若い医師と年長の医師のあいだの差が最も少ない。ストレスレベルが高いと回答した人の割合は、55歳未満で48%、55歳以上で46%だった。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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