パウエルは、金利は制約的な水準に近づいてきているので、利上げペースを減速しつつ、インフレ率がはっきりと下落するまでは金利を高い水準で維持するのが、インフレをめぐる不確実性を効果的に管理する方策のひとつだの認識も示した。
これにより、今月13〜14日に予定される連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.5ポイントの利上げが決定される可能性が大きく高まった。FOMCは過去4回連続で0.75ポイントの大幅利上げを決めている。市場は、米経済の金利がピークにかなり近づいていることを確認したパウエルの発言を好感している。
インフレは予断許さず
パウエルは講演で、過去1年、米国のインフレについての予測は外れてきたとも指摘した。インフレ率は低下すると多くの人が予想してきたが、実際は横ばいで推移し、なかなか下がらない。
そのためパウエルは、10月の消費者物価指数(CPI)が前向きな数字だったにもかかわらず、まだインフレに対する勝利宣言をする気はない。過去に、インフレ率が下落しても翌月には再び上昇した例が何度かあったことにも言及している。実際、インフレ率の再加速を示唆するデータもあり、今月13日に発表される11月のCPIへの注目度がさらに高まっている。
12月は利上げ減速の公算大
パウエルは、12月のFOMCで0.5ポイントの利上げを決めることを強く示唆した。それは、FRBがインフレを抑制できていると満足しているからというよりは、過去数カ月の利上げによって金利がFRBの望む水準に近づいてきたからだ。
パウエルは、金利のピークがどのくらいの水準になるのかはFRBも正確にはわからないと率直に認めたうえで、そうである以上、その水準に近づくにつれて、金利をよりゆっくり動かすのが賢明なリスク管理戦略だと思われるとした。
賃金上昇を注視
パウエルは、非常に注視している指標のひとつが賃金インフレであるとも説明した。米国の雇用市場について、コロナ禍の間に多くの高齢労働者が退出し、その後戻ってきていないことなどが原因で、需要が供給を上回っており、明らかにバランスが崩れているとの見方を示した。
その結果、賃金が押し上げられ、それによってサービス価格も上昇しているとパウエルはみている。アトランタ連銀の算出する賃金トラッカーによれば、賃金は今年10月までの1年間で6.4%上昇している。
利上げ近く終了か
パウエルは、単月のCPIが良好な数字であっても、それだけではインフレ対策の手を緩めない構えだ。インフレ率がFRBの目標である2%戻る方向になったのがはっきりするまで、FRBは引き続き金利を高い水準で維持するとの見通しをパウエルは示している。つまり、12月に再度利上げを行い、インフレデータがもっと有望なものになるまで金利を高止まりさせる姿勢だということだ。
パウエルが賃金インフレを注視しているのは、モノや住宅の価格が下がり始めたことに自信を深めているからだろう。いずれにせよ、8月のジャクソンホール会議での講演に比べると、パウエルのトーンは和らいでいる。インフレとの戦いは続くかもしれないが、利上げは向こう数カ月で終了する可能性がある。
(forbes.com 原文)