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2022.12.04

サッシカイア 自由な発想が生んだイタリアワインの新潮流

サッシカイア

イタリア中部のトスカーナ州といえば、中世の街並みがそのまま残るフィレンツェやピサの斜塔が有名な地域だ。キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノといったイタリアを代表するワインと郷土料理、そして自然豊かな景観も、訪れる人を魅了している。



1970年代、既存の規制や枠にとらわれない発想で新時代を切り拓いたワイナリー「テヌータ・サン・グイド(Tenuta San Guido)」は、そのトスカーナ州の沿岸部ボルゲリにある。「サッシカイア」の造り手といえば、ワイン愛好家はピンとくるだろう。

サッシカイアは、ボルドーワインをお手本とし、カベルネ・ソーヴィニョンをベースに造られる。1940年代半、当時のオーナーであったマリオ・インチーザ侯爵が、海沿いの気候や土壌がボルドーと似ていることに注目し、この地でボルドーのブドウ品種から高品質のワインができると信じてカベルネの栽培を開始。土着のブドウ品種ばかりが植わっていた時代に、斬新な発想だった。


収穫中のワイナリーの様子(2022年9月撮影)

サッシカイアとして販売された最初のヴィンテージは1968年だが、当時の規則や格付け基準ではイタリアの上位格付けとされる原産地呼称(DOCGやDOC)の要件から外れていたため、格下とされるVino da Tavola(テーブルワイン)として発売された。

それでも、サッシカイアは、優れた品質と味わいから世界的な人気を集め、それに追随するワイナリーも次々と出てきた。サッシカイアに代表されるモダンで規格外のワインは、やがて「スーパータスカン(スーパートスカーナ)」と呼ばれ、無視できない一大ムーブメントに成長。1994年には、その名前のついた「Bolgheri-Sassicaia DOC」が創設された。


熟成もボルドーワインのようにフランス産オークが100%使用されている

サッシカイア2019年は、スミレやラベンダーの華やかさに、チェリーやプラムの赤果実、黒オリーブ、ヴァニラや丁子、甘草といった様々なフレーバーに、きめ細かなタンニンと絹のような滑らかな口当たりのワインだ。長期熟成の可能性を感じさせる骨格がありながら、軽やかさや気品も兼ね備える。



トスカーナは、サッシカイアが生まれる沿岸部から内陸に入ると、自然豊かな山中に隠れるように小さい村々が点在していて、気の向くままにドライブしても楽しい。多様なワインに加えて、海の幸と山の食材から作られる郷土料理も味わえる。イタリアへ旅行する際には、足を伸ばしてみてはいかがだろう。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文・写真=島 悠里

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