ウクライナ南部のロシア軍塹壕は弱点に、攻撃阻止には短すぎる

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ヘルソン州のザポリージャ側に大規模な防御がないのは、ロシア軍の作戦立案者たちがこの軸線に沿ってウクライナ軍が攻撃するリスクを軽視していることを示しているのかもしれない。もちろん、ロシア側が機動的な防衛を計画している可能性もある。砦から砦へと後退し、ウクライナ軍のすぐ前にとどまり、1マイル(約1.6キロ)進むごとに死傷者が出る。この移動しながらの防衛に聞き覚えがあるとすれば、それはウクライナ軍がこれまで何度もロシア軍の攻撃を破ってきた方法だからだ。

「ロシア軍は、ヘルソン州東部における長期的な防衛のための条件を整えている」と戦争研究所は指摘する。しかし長期にわたって防衛しても、ドニプロ川左岸に「強固なウクライナ軍の拠点」が少なくとも1つは作られるかもしれない。

つまり、ウクライナ軍が最初の攻撃で大きく前進できなかったとしても、拠点まで後退し、態勢を整えて再び挑む可能性がある。ドニプロ川南のロシア軍の配置は、クレムリンの期待を物語っている。この大規模な戦争にとって初となる冬が始まり、ロシア軍司令官は守勢を維持するつもりだ。そして、陣地と引き換えに時間を稼ぐつもりなのかもしれない。

わからないのは、ロシアが稼いだその時間で何を狙っているかだ。ロシア軍は、第2弾となる数十万人規模の強制動員を計画している可能性がある。「ウクライナ軍がこの(南部)地域の防衛線を突破するのに数カ月かかるとロシア軍が予想しているなら、ウクライナの反攻を阻止し、場合によっては事態を逆転させるのに間に合うよう、追加の動員部隊や部分的に訓練を受けた徴集兵を向かわせると考えるのが合理的かもしれない」と戦争研究所は説明した。

しかしこの予想は、将来の徴集兵が現在の徴集兵よりも優秀という大きな前提に依拠する。

ロシア政府が9月に徴集した30万人はたいした訓練も受けずに戦線に投入され、ウクライナ軍が同月から自国の広大な地域を解放するのを妨げなかった。12月か1月にウクライナ軍がドニプロ川を越えて攻勢をかけるとして、同じように準備不足の徴集兵がさらに数十万人いて違いを生み出せるだろうか。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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