ウクライナ南部のロシア軍塹壕は弱点に、攻撃阻止には短すぎる

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ウクライナ軍の旅団がウクライナ南部でロシア軍を川幅のあるドニプロ川の向こうに後退させてヘルソン市を解放し、ロシア軍の9カ月にわたる攻勢をそいでから3週間が経った。

南部での戦闘はそれ以来、沈静化している。だがその平穏は来るべき深刻化を示している。ロシア軍は塹壕を掘っている。そしてウクライナ側はロシア軍の新たな防衛線の弱点を探っている。

その弱点はすでに明らかだ。米ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンクの戦争研究所はウクライナ南部におけるロシア軍の防衛に関する詳細な研究の中で、「ヘルソン州東部のロシアの野戦要塞は道路に沿ったドライブの防御に最適化されたもので、遮るものがない野原での包囲に対して非常に脆弱だ」と指摘している。

ドニプロ川左岸のヘルソン州東部では塹壕と戦車トラップが続々と出現している。しかし要塞の長さは不十分で、途中で途切れている。ドニプロ川から南下し、ロシア軍に占領されたクリミア半島に向かう幹線道路をまたいでいるに過ぎない。これは、南方で消耗しているロシアの野戦軍にとって不吉な兆候だ。

ウクライナ軍の機械化部隊はすでに荒地の横断に精通している。そうやって9月からヘルソン北部に進軍した。確かにウクライナは現在寒く、地面はぬかるんでいて平原を横断しながらの行軍には理想的な状況ではない。しかし、今後数週間で気温は下がり、地面は固まる。ウクライナ軍がドニプロ川を渡ったら、再び野原を通らない可能性はないとは言い切れない。

戦術的には、ウクライナ軍は荒れ地を進むことでロシアが最も守りを固めている陣地を迂回することができるかもしれない。作戦上も、ウクライナ軍はロシアの密集した要塞を回避するチャンスがある。

戦争研究所のアナリストが衛星画像を調べたところ、ドニプロ川河口の左岸からカーブを描いて突き出ている砂地のキンバーン半島の東端に、ロシア軍の新しい土塁がたくさんあることを発見した。

これらの土塁は理にかなっている。ウクライナ軍の奇襲隊は少なくとも2週間前からキンバーン半島にいたようだ。ウクライナ軍がドニプロ川の左岸に陣取ろうとキンバーン半島から東に移動を試みた場合、ロシア軍の新しい要塞が邪魔になる可能性がある。

しかし、キンバーン半島とは反対側のザポリージャ州との州境のロシア軍の要塞はかなり薄い。アナリストらは以前からザポリージャ州でのウクライナ軍の攻勢を予想していた。ウクライナ軍が右旋回し、ドニプロ左岸のロシア軍第一陣の背後に回るかもしれないというものだ。
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翻訳=溝口慈子

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