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2022.12.01 16:45

世界メジャーに追いつけ! INPEXのタフな交渉人の見る未来

上田 隆之


日本政府は協力を求められたが、ジェット燃料は灯油と同じものなので、米軍に回せば冬場に国民が凍えかねない。国際協力と国民生活をどうやって両立させるのか。胃の痛くなる思いをしたはずだが、本人はケロリと振り返る。
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「そりゃ苦しかったですよ。でも、苦しいほうが楽しいでしょう?」

もともと上田はプレッシャーの強いほうを選ぶ傾向がある。東大から経産省に入ったのは「難しさと楽しさが最も共存している」と思ったから。経済産業審議官を務めて同省を退職後、衣服の自動折り畳み機で話題になったスタートアップのセブン・ドリーマーズ(のちに破綻)の社外役員に。ナンバー2まで上った官僚としては異例の挑戦だが、「世の中にないものを出す手伝いをしてみたかった」という。

2017年にINPEXの副社長を引き受けたのも、難しさと楽しさを感じたからだった。
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「INPEXは国内だと立派な大企業ですが、世界のメジャーと比べたら子ども同然。そういう会社を大きくするのは、僕にとって楽しい話」

INPEXは2050年カーボンニュートラルに向けて、ネットゼロ5分野への研究開発投資を加速させている。なかでも注目は、天然ガスからつくるブルー水素だ。天然ガスシフトを進める同社にとって取り組みやすい次世代のエネルギー。今年度中には新潟県柏崎で生産からCCS、発電まで行う「水素製造・利用の一貫実証」に着手する予定だ。

「いま入社してくる社員が50歳になったときも日本のエネルギー供給のメインプレイヤーであり続けるためにはいまから投資が必要です。まだ水素はもうからないから、苦しいばかりですけどね」

口ではぼやきつつも、その状況を楽しんでいるかのように上田の表情から笑みがこぼれていた。

うえだ・たかゆき◎1956年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)へ入省。資源エネルギー庁長官、経済産業審議官を経て2017年に国際石油開発帝石(現INPEX)副社長に就任。18年より現職。

文=村上 敬 写真=佐々木 康

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