「よきもの」は長く使い続けられる機能、質感にこだわった商品をピックアップしたコーナー。名古屋店の「男の書斎」にも通じる付加価値の高い商品コーナーだ
「よきもの」はハンズスタッフが厳選したこだわり商品のセレクトコーナー。メンズ小物(日本製の傘、革製バッグなど)、ビューティーグッズ(爪切り、耳かきなど)、キッチングッズ(オリーブの木のカッティングボード、ドイツ製チーズナイフなど)、ステーショナリー(万年筆など)の4コーナーを設置。それぞれ小さなコーナーではあるが、職人の手仕事の魅力を伝えるセレクトが光る。
PB商品も充実 本部MDでハンズらしさを発信
「フカボリスポット」は各売り場に設けられ、プロ仕様の商品などジャンルを深く掘り下げた商品で構成される
「フカボリスポット」はオーラルケア、カード、コーヒー用品、洗剤など店内各コーナーに設けられる。本部MDによる商品群を再編集して、専門性の高い商品をピックアップ。オーラルケアの売り場では専門性の高い歯ブラシを取り扱うなど、ドラッグストアやホームセンターにはない商品をさりげなくアピールする。
この他にも、「HandMarks」のバッグやキッチン用品、「muqna」(ムクナ)のスキンケア用品など、ハンズオリジナルブランドの商品が非常に充実しているのも特色だ。
スキンケア用品「muqna」(ムクナ)、キッチン用品「HandMarks」などハンズPB商品も充実している
こうした売り場づくり、商品構成を見ると、本部MDの商品、そして店舗独自の商品の両面で、従来の魅力である“目利き”は随所に活かされている。カインズの山田英輔執行役員CSOが「ハンズとカインズは完全に別ブランド。原則としてハンズのよさを尖らせていきたい」と語っている通りで、冒頭の「ハンズがホームセンター化してしまう?」という消費者の不安は杞憂であることが分かる。
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旧来のハンズマインド生かし、尖った魅力を表現
先に述べたハンズらしさを形にするには、名古屋が第1号店となったことはうってつけだったと考える。名古屋の2店舗を運営する三交シーエルツ―の親会社・三交クリエイティブ・ライフは、東急ハンズのフランチャイジー第1号で、2010年代以降全国にFC店が展開されるまでは、唯一のフランチャイジーだった。東急ハンズにほれ込んで別事業に進出したという出自もあって、旧来のハンズマインドが社風として受け継がれている。
そのため名古屋店には「男の書斎」(男性向けのこだわりギフトなど)「地球研究室」(アメリカに直接買い付けに行く化石をはじめとした科学関連商品)「私の時間」(手芸)など、自ら開拓した取引先の商品を扱うオリジナルの売り場も多い。東海3県のブランドを集めた「a!ttention」は、同社だからこそのハンズの“尖った”魅力を表現した売り場といえるだろう。
「a!ttention」の「UZUiRO」(ウズイロ)は愛知・三河のカジュアルウエアブランド。洋服のコーナーはハンズでは珍しい
一方で、ハンズのもうひとつの象徴であったDIYとクラフトの商品は取り扱いがない。売り場全体のイメージも洗練されていて、従来の男臭さはかなり薄まっている。これについては「松坂屋内での出店ということもあり、女性のお客様が多いことを意識した」(ハンズ名古屋松坂屋店・有村裕樹グループマネージャー)ことが反映されているともいえる。
「ANNEX店が閉店しておよそ1年がたち、“待っていた!”と足を運んでくれる昔からのお客様も少なくない」(有村さん)というように、東急ハンズANNEX店は35年間にわたり地域で愛されてきた東海地方のハンズ1号店。思い入れの強い顧客が少なくないだけに、彼らがこの変化をどう評価するかは気になるところだ。
同店は移転により一から売り場づくりを行えたため、既存のハンズとは条件が異なり、これからのハンズの方向性をくまなく体現したとは言い切れないかもしれない。それでも、新たな魅力やカラーが加味されていることは確か。今後の“新しいハンズらしさ”に期待を抱きたくなる、そんな「新ロゴ」を掲げたハンズ1号店であることは間違いない。
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