この冬、日本政府は全国の家庭や企業に対し節電要請を行うことを決定しました。日本は、この危機を季節的なものとせず、長期的な課題として捉え、エネルギー戦略の見直しをする時期を迎えています。世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダから、日本の現状についてご紹介します。
世界的なエネルギー危機は、人々の暮らしから企業の活動に至るまで大きな影響を与えています。日本でもこの冬の電力需給がひっ迫する恐れが強まり、政府は、全国の家庭や企業に対し、12月から来年3月31日まで、節電の協力を呼びかけることを決定しました。数値目標は設けられていませんが、日本における冬の節電要請は2015年度以来7年ぶりのこととなります。
節電プログラムでエネルギー消費抑制を促進
電力を安定して供給するためには、想定される電力需要のピーク時に、供給力の余裕がどの程度あるかを示す「電力供給予備率」が最低でも3%、理想的には7〜8%必要であるとされています。
この冬、この3%の最低水準は全国的に確保できていると言われていますが、気温の低下などによる急な電力需要の増加や、発電機のトラブルなどによる供給力の低下に備えるため、政府は今回の節電要請に踏み切りました。またその背景には、電力不足の最大の要因、火力発電所の燃料となる液化天然ガス(LNG)の需給のひっ迫もあります。
ウクライナ侵攻をきっかけに世界的に広がるエネルギー価格の高騰は、エネルギー資源の大部分を輸入に頼っている日本にとりわけ深刻な打撃を与えています。経済産業省・資源エネルギー庁によると、2019年度の日本のエネルギー自給率は12.1%。経済協力開発機構(OECD)に加盟している36カ国の中でも、日本は35位と低い水準です。
OECD加盟主要国の一時エネルギー自給率比較(2019) Image: IEA「World Energy Balances 2020」の2019年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2019年度確報値。
電気代の高騰が家計や企業の経済活動を圧迫する中、政府は、節電を促す動機作りのひとつとして、「ディマンド・リスポンス(DR)」の重要性を示し、電力各社のDRサービスを通じて節電に協力した電力利用者にポイントを付与する支援策を講じています。電気代の支払いや買い物などに使えるというこのポイントは、個人の場合は一律2000円、企業・事業者の場合は一律20万円相当を受け取ることができます。