「新しい鉱物を発見したとき、それは実際の地質条件と岩石の化学的状態がそれまで発見されたものとは異なっていたことを意味しています」とアルバータ大学の地球・大気科学学科教授で、同大学隕石博物館キュレーターのクリス・ハードはいう。「それがこの発見を刺激的なものにしているところです。この隕石には科学にとって新しいことが正式に認められた鉱物が2種類もあるのです」
2種類の鉱物は、同大学に分類のために送られてきた70グラムの単一の切片に含まれていたもので、すでに3番目の鉱物が存在する可能性も検討されている。もし研究者らが巨大隕石の標本をさらに入手できれば、それ以上見つかる可能性もあるとハードは指摘する。
新たに発見された2種類の鉱物は「elaliite(エルアリアイト)」および「elkinstantonite(エルキンスタントナイト)」と名づけられた。前者は隕石自身から名づけられたもので、その隕石はソマリアのヒーラーン州エル・アリ近くにあるラクダのための牧草地として使用されていた渓谷の地面に横たわっていたところを発見された。ハードは2番目の鉱石をリンディ・エルキンス=タントンに因んで名づけた。同氏はASU惑星イニシアチブ副総裁、アリゾナ州立大学地球・宇宙研究学部教授で、NASAの来たるべき火星と木星の間で太陽を周回する金属に富む独特の小惑星と宇宙ランデブーするミッションであるPsycheの主任研究員を務める。
「リンディは惑星のコアがどのように形成されたか、鉄・ニッケルコアがどう形成されたか、そして現在私たちの知る最も近い類似物が鉄隕石であることについて、多くの研究を成し遂げてきました。このため、鉱石に彼女に因んだ名前をつけ、彼女の科学への貢献を称えることは理にかなっています」とハードは説明した。
UCLAおよびカリフォルニア工科大学の研究者らと協同で、ハードはエル・アリ隕石を鉄・ケイ酸塩隕石に分類した。350以上知られているものの1つだ。
ハードが分類のためにその隕石を分析していたとき、何かが彼の注意を引いた。そしてアルバータ大学電子マイクロプローブ研究所長アンドリュー・ロコックの専門知識に力を借りた。同氏は別の新しい鉱物の発見に関わっていた。
「分析を始めたその日に、彼は『新しい鉱物が少なくとも2種類ある』と言ったのです」とハードは述べた。「あれは画期的でした。一般的に新しい鉱物があると言えるためにはもっとはるかに時間がかかるものですから」
研究チームはそれらの鉱物を調べ、形成されたときの鉱物の状態について何が言えるかの研究を続けている。
「この石がかつてその一部だった小惑星の地質過程や地質史を紐解くことは、私の専門領域です。隕石の研究をしているという理由だけで、まったく新しい鉱物の発見に関わることができるなど考えたこともありませんでした」とハードはいう。
「未知の新しい物質が発見されれば、材料科学者も必ず興味を持ちます。なぜなら社会のさまざまなことに利用できる可能性があるからです」とハードは指摘する。隕石の中で見つかった鉱物の中には、特異な磁気特性をもつ合成物質を製造するためのテンプレートや、新技術への応用に役立つものものもある。
この隕石の未来についてはまだわからないが、ハードによれば、隕石が購入希望者を探すために中国へ移されたらしいというニュースをチームは聞いたという。果たして科学目的のために追加の標本が入手できるかどうかは現時点では不明だ。
研究チームはこの発見について、11月21日の Space Exploration Symposiumで発表した。資料はアルバータ大学から提供された。
(forbes.com 原文)