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2022.11.30

認知症が「筋肉の電気刺激」で緩和? 運動がいらない画期的な治療に期待

Getty Images

学習や記憶や認知能力には、脳の中の海馬で作られるある物質「脳由来神経栄養因子(BDNF」が関与しています。この発現量の低下が、アルツハイマー病、うつ病、パーキンソン病などの重篤化を招くと言われています。

BDNFは海馬のほかにも筋肉で作られることも知られています。なので、筋トレでこれらの病気の改善が期待できるのですが、そのためにはかなりキツイ運動をしなければならず、高齢者や病気の人には難しいという悩みがありました。そこで、先進テクノロジーのブランディングを展開するMTGと金沢大学による研究グループは、筋肉への電気刺激でこの物質を増やす実験を行ったところ、発現量の増加が確認できました。

海馬のほかにBDNFを作り出せるのが、骨を動かすための筋肉「骨格筋」の細胞です。研究グループは、骨格筋に神経筋電気刺激(EMS)を与えたときに血中のBDNFが増えるかどうかを確かめました。すると、刺激する筋肉の量が多いほどBDNFの濃度は高まり、約20分間にわたりBDNFの発現量が増加してゆくこともわかりました。とくに下腿三頭筋(ふくらはぎ)に刺激を与えたときに高い効果が得られました。ちなみにEMSは、筋力の回復などリハビリ分野で広く使われている一般的な治療法です。

この結果から、高齢や病気のために運動ができない人たちも、ふくらはぎへのEMSにより認知症やうつ病を改善できる可能性が出てきました。

文 = 金井哲夫

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